森の中を走っているとポケットの通信機が本部から何かを受信しているのに気づく。 「ん?何か来たかな?」 見るとそこには最後の参加者の登録プロフが載っている。・・・一通り目を通すとアナウンススイッチを入れ、 「えと、最後の選手。Fゲート、アルケミ選手。武器は『盛尊』、今回は唯一の銃器使いですね。これで全ての選手が揃いました!皆さんの健闘を祈ります。」
「遅かったじゃねぇか・・・待ちくたびれちまったぜ。」 ゲートから現れた見慣れた顔に声を掛ける。 友人。そして、親衛隊として共に城を護っていた同僚。 その目には、既に闘志と殺気が宿っていた。 「いいねぇ・・・そうでなくちゃ、面白くない。」 ディアブロが呟く。その瞳は、心底楽しそうだった。 昂ぶる心を抑えるように、大剣を硬く握る。 「行くぜ・・・アルケミ!」 ぬかるんだ大地を蹴って、ディアブロは跳躍した。
俺の一撃をさらりと受け流すと彼は距離を取り呪文を詠唱した。「・・・ダークボム!」 その瞬間目の前に闇の塊が出現する。 俺は素早く身をかがめ防御体制をとった。 そしてリズムを取り始める。 目の前で爆発が起こり、その魔力は俺のチャチな防壁など楽々ヒビを入れた。 服が所々焼け、骨が軋み身は地面に叩きつけられそうになる。 だがリズムを取るのを止めない。 4ビートから8ビート、そして16ビートへと・・・ そして叫ぶ 「ダンス・ダイブ!」
その直後爆煙から飛び出てきたのは巨大な白い玉。いや正確には剣を縦横無尽に高速で振る事により白い玉の様に見えるものだった。 そのまま彼へと切りかかり一言言葉を投げる。 「死のダンスホールへようこそ」
縦横無尽に繰り出される剣撃を私は受け止め、受け流がす。 しかし、魔導師が騎士の剣を全てを防ぎ切れる訳も無く、 次第に剣撃が身体をかすめて行く。 と、次の瞬間、受け流し損ねた攻撃の衝撃が私を後方に弾き飛ばした。 何とか態勢を立て直し着地したが先程の衝撃に手が軽く痺れている。 私は口元に流れる血を軽く拭い、魔力を紡ぎ始めた。 手を払うと再び青白い光が浮かぶ。 そして、続けて詠唱を開始した。 「闇の剣よ。敵を切り裂け!ダ−クセイバ−!」 ヤヌス殿を取り囲む様に無数の闇が発生し剣へと姿を変え、同時に襲いかかった。
「さあ、第二幕の幕開けです」何処からともなく声が聞こえ枝に腰掛けていた燐=アスクは身構えた。 すると、またもや色鮮やかな緞帳が舞い降り、やがて幕が上がると黒い羽織をひるがえし新しい着物に着替えた オウガデスが現れる。「血まみれの上に泥だらけ、気がつきゃ体は汗まみれの傷だらけ、風呂に入って心機一転、装いも新たにオウガデス推参!」ちなみに足袋は洗濯中です。
「あー。お帰り。」 なんとなくまったりへろへろと手を上げて枝から飛び降りた。 地面に着く前に翼を広げてオウガデスと向き合う。 「あんた、どうにも戦いにくくて」 かりかりと髪を掻き乱すしぐさには焦りも見えない。 「鬼ごっこかかくれんぼにでもしとくかい?」 軽口なのか本気なのかは判然としなかった。 何が起こっても対処できるだけの身構えは崩さない。
「風が・・・」 突風が森を駆け抜けた。一瞬執行部室の画面が乱れたが、次に映った時には霧が晴れ、選手がそれぞれの相手と対峙していた! 「これじゃ、木が邪魔してみえないわっ!」 「ああぁ!待って!そのボタンは・・・!」 ぽちっ・・・☆
「Dolly女史・・・そのボタンは「THE ノコギリ」です・・・」 私は顔を覆った。森の木々が根こそぎカマイタチにより切られていく!? 数分後、森は原っぱになった・・・ HBFステージは「場所:原っぱ 天候:晴れ 地面:ぼこぼこ」です。
斬撃により弾き飛ばし、更に追撃をかけようとする。 しかし彼の呪文詠唱は早い。 「闇の剣よ。敵を切り裂け!ダ−クセイバ−!」 俺の周りに無数の剣が浮かび一斉に襲い掛かってくる。 だがそれは俺の体に触れる事無く全て地に落ち再び黒い塊となって霧散した。 「残念ながら・・・ダンス・ダイブは攻防一体が身上。物理系魔法はこの前には無力です」 そう言い放つと再び追撃姿勢に移る・・・ が、その瞬間一陣の風が吹き霧を吹き飛ばした。 それだけではない。目の前の木が次々と根こそぎ無くなってゆく。 「なんだこりゃ?」
「随分見晴らしも良くなり、ここからが本番ですよ♪『魔界獣ショウテン召還』!」 扇子から複数の座布団のような魔界獣が飛び出し、その内の一枚が燐=アスクの膝元に滑り込む、素速く避けたかに見えたが座布団から手が生え燐=アスクの足を掴み拘束する。 「その魔界獣はくだらないことを言わない限り外れることはありませんよ♪さあ、あなたのネタを聞かせてください」 そう言ってオウガデスは少し離れた位置にある倒された木の切り株に座り込んだ。
「ディアブロ…」 オレはこの男が好きだった。 同僚として、いつも軽口をたたきながら城門警護に立つ日々…。 オレが倒れても、この男が次に控えているなら安心できた。 「残念だな、貴方が倒れるところを見なくちゃならないのは」 ベルトから銃を抜き、狙いを定める。間合いを詰められたら、オレが危ない。 「オレの弾丸が、貴方の心臓にキスしに行くぜ!」 見晴らしの良いこの平原、丸見えだぜディアブロ!
周囲の木々が一瞬にして切り倒され、突如として視界が開かれる。 だが、それでもディアブロは止まらない。 (例えここで止まったとしても弾丸の的になるだけ・・・ならば!) 両者の距離が狭まり、殺気が拮抗する。 「オレの弾丸が、貴方の心臓にキスしに行くぜ!」 アルケミの弾丸が放たれる瞬間を見計らって、ディアブロは 思いきり大地を蹴り、上に向かって跳躍した。 アルケミの頭上を飛び越え、身体を捻って着地する。 そして、咄嗟に懐に仕舞ってあった短剣を放った。
「あっは☆さいっこーvvこれでイイオトコ達がよく見えるぅ♪」 呆れるレイラールを後目におおはしゃぎしていた女は はた、と止まった。 「私有地だっけ、ここ…」 ・・・・・・・・・・・。 沈思したのは2、3秒。 くるりとモニターに向き直るとレイラールを見もせず言い放った。 「弁償頼むね、レイさん。さてっv燐さんのネタ、ぜっったい見逃せないーっ♪」
短剣が空を切って飛んで行く。すると、短剣に埋め込まれた 宝珠が不意に光った。そして、その短剣の周囲に風を 巻き起こし、加速していく。 「ワール・ウィンド・・・拙者の作った剣だ。 ・・・避けられるかな?」 ディアブロが、不敵に笑った。
「…天候変化は予想していたが…。」 木々の無くなった森に私は苦笑し辺りを見回す。 「視界が良すぎるのも困り物だ…。」 少し溜め息をつき再びヤヌス殿を見る。 「物理魔法が効かんとなると…。」 私は魔力を紡ぎ出す。 「…プレゼントだ…ダ−クボム!」 手を差し出し微笑する。すると、ヤヌス殿の前に闇の塊が発生した。 「これも一緒に差し上げよう。」 私の言葉に反応し先程、現れた青白い光が動き出す。 「シュ−ティング・レイ!」 手を軽く払うと光の矢が放たれ、真っ直にヤヌス殿へと向かった。 私は再び魔力を紡ぎ始める…。
「何っ…!?」 向こうの方でオウガデス師匠の繰り出す謎の座布団技に、一瞬目を奪われていた、その隙だった。 ディアブロの放った短剣が、頬をかすめていった。 冷たい刃の感触に、次の瞬間焼けるような裂痛…。 「…く…!」 …まだ皮膚が少し裂けただけだ。 「どこだ、ディアブロ…!」 背後にその姿を見、さらにもう一発。銃声。
「この魔界獣ショウテンは嫌がる者や、警戒する者に向かっていく習性があるのです」 パッパカパカパカ、パッパ、ふぁ♪ 奇妙な音と共に二枚の座布団がアルケミとディアブロに向かって飛んでいく。 「二人とも自然体になってください、そうすれば避けられますよ」
「ネタ言われてもなぁ」 ダジャレじゃだめか、とか本気で考える。 ふとんがふっとんだとか。 「戦いっていうかさぁ……闘いだよな、色んな意味で。」 切り株に腰を下ろしたオウガデスを情けなさそうな表情で見やる。 「いやでもこれで棄権すんのもなんか悔しいし」 座布団を足にくっつけたまま、はぁ、とため息。
「駄洒落でも座布団は無くなりますよ、ただし私の知っているネタは無効です、オリジナルネタで御願いします♪」 ・・・そう言いながら白い布を数枚取り出し何やら作っている。 「動けない貴方にさらに精神的攻撃、『魔界獣サクラ召還』!」 またもやオウガデスの扇子から女性型魔界獣が飛び出しオウガデスに黄色い声援を送った。 あまりにあからさまな応援に赤面するが、燐=アスクには野太い男性の声で罵声を浴びせる。 ・・・オウガデスは何かを布でくるんでいた。
「応援だのブーイングだのはあんまり堪えないが……」 ぶつぶつ呟きながら口元に手をやる。 「……豚の夫婦が離婚した、そんな名前の菓子。トンガリコ○ン。なんちゃって。」
サクラが喜んだ「豚が離婚でトンがリコン!バンザーイ、バンザーイ」 オウガデスの手から魔の扇子が飛び出し扇子が開く、すると赤き魔界獣クーン・ヤマダが現れ座布団を燐=アスクから取り上げ消えていった。 「お見事!よく抜け出せましたね燐さん♪」 オウガデスは先程の布を取り出し「おひねりです、まあ、元は貴方の所持金ですが」そう言っておひねりを燐=アスクに投げ渡す。
「お、どもー」 飛んで来たおひねりを掴み取る。 片眉を上げてオウガデスを見やった。 「なんか、色んな意味で勝てる気がしないんだよなぁ」 言ってベイルの方に手を振った。 「早いけどさ、棄権していいか?」 また旅にもでなきゃならんし、と言訳のように呟く。
「あれを避けるか・・・知ってはいたが、なかなかやる。」 自分の攻撃がかわされたというのに、ディアブロは 嬉しそうだった。自然に口元が笑みで歪む。 次の瞬間、報復の弾丸が飛んでくる。タイミング、 反応速度、命中精度・・・全て、申し分ない。 咄嗟に大剣を斜め構えて受けとめ、受け流す。 「そうだ・・・それでこそだ。」 ディアブロが呟く。その瞳は既に闘争の愉悦に酔っていた。 「さあ・・・もっと拙者を楽しませてくれ。」
しかし、まるでそれを遮るように座布団のような 謎の生命体がオウガデスから放たれた。地面を滑るように 移動しながら、ディアブロへと迫る。 「・・・ふん。」 ディアブロは身体を捻ると、その回転を利用して 背後に迫っていたその物体を一太刀の元に両断した。 「下らん横槍はやめてもらおうか・・・。」 ディアブロはオウガデスを睨め付けた。 「拙者の楽しみを邪魔すると・・・御主も、先の召喚獣と 同じ運命を辿ることになるぞ。」
やっとの思いでこの場所にたどり着き、まっさきに息を整える。 「・・(深呼吸)・体力ないなぁ、自分(汗)」 そして次々に起きている戦闘状況を確認していると、燐=アスク選手から一言。 「早いけどさ、棄権していいか?」 それを聞いて暫らく考えた後に通信機に手をかけながら 「・・・んと、燐=アスク選手。本当に棄権でよろしいですか?」 確認のため再度確認をしてみる。
「…プレゼントだ…ダ−クボム!」 「シュ−ティング・レイ!」 立て続けに2つの呪文が詠唱される。 その詠唱の瞬間俺はこう呟いた 「神・突・撃」 その瞬間周りの動きはスローモーションのように見え、俺の体はロケットーブースターを取り付けたような爆発的な加速をみせる。 反射速度、神経伝達速度、体速度が全て24倍になる俺の必殺技。 彼の出した「ダークボム」は魔力の収縮段階で横をすり抜け、「シューティング・レイ」は何発か浴びるものの、動きは止まらない。
そして次の詠唱を始めようかという時には既に彼の目の前へ達し、最速の動きから更に全斬撃中最速の「突き」を繰り出す。 小細工無しに真っ直ぐ突き刺した直後「ダークボム」が爆発を起こした・・・
何故だか日曜夕方のやるせなさを思わせるのん気な旋律と共にものすごいスピードで迫り来る座布団獣…。 「お、オレの相手は貴方じゃないんだ、オウガデス師匠!でもアレだ、サーン・ウタマールの全部持っていってください!」 でも何故だろう…シロー・マーギが恋しいのは…。『このネタ、ナハリのほうじゃウケたんだよね〜』 ======閑話休題======
ヤヌス殿が動いたと思った瞬間、すでに目の前に達していた。 咄嗟に身を捻り胸への直撃は避けたものの、繰り出された突きは心臓の少し上を貫いていた。 私は魔杖を握る手に力を込める。 次の瞬間、魔杖は大鎌に変化し、それを振り払った。 間合いを広げ傷を押さえ膝を付く。そこで先程紡ぎ始めた詠唱が完了した。 「深淵の闇よ、我が声に従い敵を討て…ダ−クマタ−!!」 |