執行部室に映し出される大画面を見ながら、レイラールは小型通信機を使い、選手にメッセージを送った。 「ヘルハンプールが誇る、屈強なる選手諸君。ようこそ、ヘルハンバトルフィールド(HBF)へ・・・」 組み合わせを発表します。 ディアブロ選手 VS アルケミ選手 燐=アスク選手 VS オウガデス選手 ヤヌス選手 VS ザンデ選手
場所の提供は、現レオプール伯ゼフィル・ゼルファ氏の裏庭にある広大な森。(伯爵のお屋敷が近くにあります。壊したならば莫大な請求書が回ってくる事うけあい♪) 天候は・・・霧です。森が不気味に見えます。 昨夜の雨で地面は泥状態だと、フィールドレポーターのベイル氏から報告がありました。
何でもアリのバトルになりますがポイントが数点あります。
各選手伝言されたゲート位置について下さい。 尚、一回入場されますとギブアップか、死ぬか、勝つかするまで出られません。ご注意ください。 それでは、ゲートを開きますっ!
小型通信機から雑音混じりのベイルの声が聞こえる。 「なんだ?もう問題発生か?」 「「ザーザザザーザザーあのー選手ざざー1人ざざーざー足りないですーざー」」 「選手が?1人?足りない?なーんだ、そんな事・・・あぁっ!?足りないだとおぉ!?」 「「そうなんですっ!登録プロフ足りませんー如何しますか!?」」 「待つ(キパ)」 「「了解です・・・」」 間に合わないと・・・私が戦う事になってしまう・・・ちょっとドキドキです
森の中は霧が立ち込め、視界が悪い。 足もとの地面はぬかるんで泥を跳ね上げる。 指定されたゲートが開くのを確認して森に足を踏み入れる。 ギブアップか、死か、敗北。 「……いっちょいくか」 ぱん、と胸の前で拳を手のひらに打ち付けた。
「こりゃ予想以上に酷いな・・・」 開いたゲートの向こうに広がる景色はとてもじゃないが闘い易いとは言えないものだった。 「ま、しゃーない。ここにいても狙われるだけだし移動しますかな」 と独り言を呟くと森の奥へ・・・・ 足跡を残さないように慎重に・・・
「コロシアム程度の規模かと想ってたんだが・・・ やれやれ、ここまでとはな。」 目の前に茂る樹々に圧倒されながら、ディアブロは呟いた。 鬱蒼と茂る木々と、そこに立ち込めている霧のせいで 視界は最悪と言えた。更にはその霧で地面はぬかるみ、 お世辞にも動きやすいとは言えない。 「ったく・・・誰だ、こんな場所選んだ奴は・・・。」 呟きながら、仕方なくゆっくりと森の中へ歩みを進めていく。 悪態を吐きながらも、彼の口元には笑みが浮かんでいた。
「やばっ遅くなっちゃった☆」 勢いよく飛び込んだ室内は暗い。 遅れたことを詫びもせず、女はレイラールの手から選手プロフを奪い取る。 とたん、くすくすと吹き出した。 「何?一枚足りないけど…レイさんも殺りあう?いいわよ?ここはアタシに任せてくれても」 ふと、モニターの変化が目に入った。ゲートに入ってきた面々を眺める。 見るからに猛者という者。一癖も二癖もありそうな者。彼らがこれから繰り広げる様を想像… 一瞬、身震いしてから乾く唇を一舐めして呟く。 「ふふ、前言撤回。興奮して解説どころじゃなくなっちゃうかもだからレイさんにはやっぱここに居てもらわなきゃ、ね」
一通りの説明が終わり、ゆっくりとゲ−トが開く。 目の前に広がるのは深い霧の森…。 一歩踏み出してみるとかなり足場が悪い。 「…飛行系魔法を登録しておけば良かったな…。」 小さく溜め息をつき森を見回す。 「…まぁまぁ…か。」 呟き笑みを漏らし、私は対戦相手を捜し足場を確認しつつ霧深い森を歩き出した。
「地面がドロドロだし、湿気は多いし、着物を汚したくないのにこんな環境の悪いところで戦わねばならないとは」 早速、隠し武器使用します。『度々旅する足袋』この足袋を履いてる限り空を飛べる。 「でも霧がかかっているし、上空からでは森の中にいる対戦相手を見つけるのは難しいかも」
かちっ 通信機のスイッチを切る。 「・・・現在5名ゲート通り抜け確認っと。それじゃ、僕の方から各選手の紹介させていただきますね。登録プロフはっと・・・」(ごそごそ・・・) 「えと、まずはAゲート。燐=アスク選手、主武器は・・・『拳』!? ・・・男ですねぇ・・・すごい(驚) 続いてはCゲート、ヤヌス選手。武器は『アビシニアンソード』。どんな攻撃が出るか今から楽しみです(笑)」
「さてさて次はっと・・・(ゲート位置確認)Aゲート、ディアブロ選手。武器は『冥剣グレイトフルデッド』。大剣からどんな剣技が繰り出されるか期待されますね。 次のゲート通過者は、Eゲートのザンデ選手。武器は『魔杖ゲートキーパー』。多大な魔力を感じる武器です。(身震い) ・・・そして現在最後のゲート通過者、Dゲート、オウガデス選手。 主力武器は『魔の扇子』。一体どんな能力があるかどきどきもんです(ぉ)」 「・・・もしもし本部。これよりリポート(及び審判)開始します。」 さて、何処からリポート行こうかな? ※執行部(僕)に故意的な攻撃は止めて下さい(懇願)
「俺ってBゲート……だよな」 アナウンスに少し笑う。 「ま、いいか」 呟いて森の更に奥へ足を進める。 相手の武器は扇子……らしい。どういう戦法でいこうかさっぱり見当がつかない。 森の中では扱い辛いガーゴイルの翼は、必要に迫られるまで使わないことに決めて歩いていく。 やがて快く張り詰めた気配が皮膚を掠めた。 「……お出ましかい?」 少し上空に浮かぶ影に声をかける。……早々に翼を使うことになるかもしれない。
やがて歩みを止めるとおもむろに剣・・・「アビシニアン」の名の通り真っ白な剣を抜き二、三度振り払う。 霧が歪み再びその静寂を取り戻した所で、 「よし・・・」 と一言だけ呟いた。 その時、霧の流れが変わる・・・気配がする! だが違和感がある。 (殺気が無い?執行部のベイルさんか?それとも只単に気付いて無い他?) なんにせよこちらが先に気付いたのであれば有利だ。 構えを脇構えに直し息を殺して待つ・・・ 焦ってはいけない。完全に気付いて無い時よりも気付いた一瞬の方が隙ができる。 そしてなにより無駄な闘いが無ければそれに越した事はない。 (さてさて・・・どうなりますかな)
手から登録プロフの紙束が奪われる。 「あ・・・Dolly女史、ご足労有り難う御座います」 私はDolly女史に椅子をすすめる。 その時、末端のコンピュータが作動し、最後のプロフが送られてきた。 「来ましたよ。最後の1人・・・」 にやりと笑って、プロフの紙をDolly女史に渡す。 出場しなければならないかと思い、無意識に握ってしまっていた九節鞭の柄から手を離す。 お・・・バトルに動きが出たようだ・・・。
不意打ちすら出来ないとは、しかも相手はガーゴイルじゃないですか、空中戦じゃ負けるかも(不安です) 「先手必勝、こちらから仕掛けさせてもらいます、『魔界獣ダフヤ召還』!」 オウガデスは扇子を拡げると扇子の絵から魔界獣ダフヤが飛び出す。 「余りチケット買うよ、S席有るよー」ダフヤは素速い動きで燐=アスクの懐から所持金を奪う。 「チッ、これだけかよ」文句を言いながらダフヤは”お笑いHBF入場券”と書かれたチケットを燐=アスクに投げ渡し去っていく。 オウガデスは微笑み「毎度お買いあげいただきありがとうございます」
「お笑いかよ!」 とりあえずツッコんでおいてから翼を広げ、オウガデスと同じくらいの高さまで飛びあがる。 「……どう行こうかね?」 ゆっくり羽ばたきながら軽く首を傾げてにっと笑う。 「とりあえず……当たってみるか!」 左手を顔の前に、右手は自然に流して一気に間合いを詰める。 オウガデスの額に手のひらを当てる感じて左手の掌底を繰り出した。
燐=アスクの掌底をまともに食らい木に叩きつけられる。 「ぐえっ」 枝が折れ落ちていくのと同時にオウガデスも落下し地面に激突するが、幸い地面がぬかるんでいたため、なんとか気を失わずに済んだ。 「ああ、着物が泥まみれ、そして体は傷だらけ、ここはひとまず逃げるとするか」 またも扇子を拡げると絵から魔界獣が飛び出す。 「一時閉幕です、『魔界獣ドンチョウ召還』!」 オウガデスを艶やかな幕が覆い隠す、そして幕が静かに消えた時にはオウガデスも消えていた。
しばらく森を進んだ所で微かな気配に立ち止まる。 しかし、相手もこちらに気が付いたのかすぐに気配が消えてしまった。静寂が辺りを包む…。 警戒しつつ私は魔力を紡ぐ。 「光の魔霊達よ、的を貫け…。」 詠唱と共に私の回りに無数の青白い光が浮かび上がる。 「…シュ−ティング・レイ!」 手を軽く払うと青白い光が一斉に霧の中に放たれた。 「けして的を外さん光の矢だ。様子見などしておらずに始めよう。」 私は微笑し霧の中の対戦者…ヤヌス殿に声をかける。 そして幾分、足場の良い場所で回りの気配に神経を研ぎ澄ましつつ身構えた。
「ん?・・・」 気配は急速に殺気を増す。 と思った瞬間視界に無数の青白い光を捕らえる。 「ひゅっ!」 軽く吸いこむと相手に向かって疾走を始めた。 背中の4枚の羽が霧を叩き剣を振るう。 ・・・風に祈りと力を込めて・・・アクト・スラッシュ!! 剣を振った衝撃波に魔力のコーティングがなされた刃が前方に向かってゆく。 いくつかは相手の魔術と打ち消しあい、いくつかはザンデさんに向かっていった。 それでも防ぎきれる物ではなく何本かの矢が俺の体を削っていく。 そして視界に入ったザンデさんに挨拶代わりの一撃を振るう。 「ヘルハンプール公国軍第一兵団長ヤヌス。参る!」
霧の中から高速で迫る魔力を帯びた気配に私は防御障壁を展開させる。 剣から放たれたであろう衝撃波は障壁に阻まれ消滅した。 しかし、僅かではあるが障壁に綻びが生じる。 (…なかなかの力量を持つ方だな…。) その直後、風を切る音と共にヤヌス殿が切りかかって来た。 咄嗟に魔杖で受け止めるが全身に衝撃が走る。 (やはり接近戦は相手が上か…!) 舌打ちをし軽く受け止めた力を抜く。魔杖を利用しヤヌス殿の剣撃を下に流しつつバックステップで間合いを広げた。 「風騎士団トゥイング−闇魔導師ザンデ…お初にお目にかかる。」
私は微笑し魔力を紡ぐ。 「久しぶりに楽しめそうだ。全力でお相手…願おうか。」 解放と同時に闇の塊が発生する。 「…ダ−クボム!」 闇がヤヌス殿の目前に転移する。そして、収縮と共に爆発を起こした。
「寝すぎた…」(爆 睡眠過多で脈打つ血管をなだめつつ、ようやく入場する。 「く、靴が。」 靴が泥まみれになることを何より嫌う闇天使。 こんな高温多湿のところへ、革の上下を着込んで来たのはまずかったか。 「さて、お待たせしたね…いつでもいいよ」 ベルトにはさんできたのは、ホルダーに入れず、むき出しのままの愛銃。
「……力量がつかめん……」 オウガデスが消え去ったあとの空間を呆然と見詰めて呟く。 追いかけまわして体力使うことはないだろう。そもそもどこらへんを探せばいいのかさっぱりである。 周りの戦闘に巻き込まれないように森の深部へと進み、適当な樹の枝に腰掛けてしばしの休息を取る。 |