王都ヘルハンプール王城ディスパテル純白の砂岩に覆われた美しい古城は今、巨大な影に脅かされている。正門のベヒモス、上空のアークダイナソア。しかし、熱帯夜の空気を痺れさせる闘気は巨大な獣たちから放たれているのではない。黒い小山のようなベヒモスの頂上無数の光に照らし出された3人の男達。そこが渦巻く闘気の中心だ。「おかえりなさいませ 懐かしき、猛者たちの集まる闘技場へ…
闘いを求めて国を発ちなお闘いを求めて国に攻め込む血塗られた3人の凱旋者ヤヌスシュアリーヴォルフ=ゾルダートヘルハンプールはあなた方を全力でおもてなしいたします。わが国で最も堅牢な砦である王城にてわが国最強の3人があなた方のお相手をいたしましょう。ジュリア.オウガデスマユキヘルハンプールバトルフィールド最終戦、開幕いたします。今宵、華麗なる惨劇を───」
BF(バトルフィールド)はサイコーに格好良く「魅せる」事をテーマにした戦闘RPです。・登録票を提出し、登録票に無い技・魔法の使用は禁止。・勝敗がなく、むしろカッコイイ負け方を追求する。つまり…「無敵RP、カッコ悪い┐(´ー`)┌」各選手の登録票は私がお預りしており、登録票に無い技を使用していないかの判断材料とさせていただきます。(試合が終わるまで公表することはありません。)期間は、短いですが17日までとさせてください。(キリよく終われなければ19日いっぱいまで延長の可能性があります。)
ここまでの経緯の都合上、スタート地点がある程度決まっています。凍牙チーム3人→正門前ベヒモス頭上からスタートヘルハンチーム3人→城内どこからスタートしても構いません。ヘルハンチーム有利のようですが、防戦ですから当然です。なお、このスレは原則選手のみレスしていきます。しかし、ヘルハン側は地元民が王城内にいる可能性も十分に有り得ます(乱入とか!?)。応援、感想レスは下記スレへどうぞ!【HBFOF】こちらヘルハンバトルフィールドオブファイナル観覧席http://www.i-koc.com/03-4-4.htm?mid=13773ライムどん、ナイス連携だぜー☆
侵攻を続けながら、俺は両腕から指令綱領をベヒモスに装填してゆく。『歩く』までを既に完了。郊外の魔力肥沃な大地から錬り上げた異形の獣が、歩きながら生誕してゆく。さすがの巨体に事前に間に合わせることは叶わなかったが、接敵までに辻褄はあう。綱領の統合のために召喚憑依させた下級の魔獣、その喜びと興奮に満ちる様がはっきりと伝わってくる。夢見さえしなかった力が唐突に我が身に満ちる狂喜。そうだろう。わかる。気持ちは理解できる。巨大であるとは。強大であるとは、斯くも我が心を踊らすものか。
だが、勝手はさせない。荒れ狂う意思を沈静し、同調し、威圧し、支配し、統合してゆく。お前には。お前には知恵ある獣として振る舞ってもらう。迷い仔よ。お前はこの俺の分身、我が落とし仔なのだ。吠えるな。狂うな。廉潔たれ。この『慄かざる者(ドレッドノート)』の晴れ舞台に相応しく在れ。遥か眼下から衛兵たちの狂乱と怒号が聞こえる。城門接触まであと幾ばくもなく。だがその前に。「蹴散らせ」『ブレス』まで、装填が終わった。
そして、巨躯の前足が立ち上がり――――思い切り地に打ちつけられた。凄まじい大音響と鳴動。もはや局所的な地震と差異ない大衝撃。嵐はまだ終わらない。尾を伸ばし、脚を撓ませ、土竜の口腔が開いてゆく。躯体から集束する魔力。混乱する兵たちの中で、避けろとの声がかすかに聞こえた。「はは。どこにだよ」土石流が何もかもを打ちつけ、ひしゃげて、押し流した。
「露払い、一つ目。これで接敵前に遠距離で刺される可能性は減ったな」更に指令を装填されながら、ベヒモスが進撃を再開する。城門までは更地になっていた。「分かっていたがとんでもないな……」ヤヌスが手で目の上に庇を作りながら呟く。「出番がないまま終わってしまったら笑うな」「これくらいじゃヘルハンは落とせないさ」ヴォルフが心底嬉しそうに笑い、そして性悪な笑みにそれを変える。「どれシュワ! 俺も協力してやるぜ! パワーアップだハハハ!」言うが早いかヴォルフが俺の腕を掴み、魔力を無理やり流しこんできた。え?ちょっ……
2通の手紙が混信し、コードが掻き乱されてゆく。統合途中でベヒモスの綱領が混線し、破綻。知恵の獣は、「■■■■■■□■■■■■!!?!!■◆■○ーーー!!!!」生まれ損ねて、狂獣となった。「てめえ!!ww」俺がヴォルフを蹴飛ばすと同時、「何やってんだヴぉ――」狂乱したベヒモスが吶喊。光波混じりのグランドブレスを吐き散らしながら、城壁へ突撃を敢行する。「あ、ヴォが落ちたぞシュア」「知るかクソ! どうすんだこれ! ああもうなんともならん!?」ベヒモスのコントロール、完全に消失。ブレスを何条も受けた城壁が目の前に迫っていた。……ああ、脱出かコレ。
ベヒモスのブレスにより城壁に幾つもの穴が開く、そこに光波ブレスを撒き散らしながら暴走する巨体の突進、いかに堅牢を誇るディスパテルの城壁と言えども、その圧力には耐え切れず砂煙を撒き立て崩壊、勢いそのままにベヒモスは正門横の城壁を抜け中庭へと躍り出た。「あらあら♪偉大なる御三方を迎えるのに門扉など閉じはしませんものを、わざわざ大穴開けての帰城とは型破りな皆様らしいですね♪」荒れ狂うベヒモスの足元に霧が立ち込め、そこにオウガデスが着物姿で現れる。「お帰りなさい、ヤヌス様、シュアリー様、そして城外のヴォルフ様♪」
オウガデスは懐から空の小瓶を取り出した。「魔界獣『ホワイト』召喚、その全てを無かった事に修正して見せましょう♪」空だった小瓶が白い液体で満たされる。小瓶を傾けると液体は大地へと染み拡がった。「『こことここ、それとここ』、あとは、あれとあれも修正です♪」あたり一面真っ白に染まったかと思うと、破壊された城壁はまるで何事も無かったかのように復元されている。「もちろん、貴方も修正です♪」白く染まる巨獣ベヒモス、怒りの咆哮を上げながら元の土塊へと戻された。消えたベヒモスに動じる様子も無く、故郷の大地へと降り立つ二人の勇士。
「露払いは払いましたよ♪されど貴方たちに霧は払えますか♪」オウガデスは空になった小瓶を捨て、代わりに『まるいなにか』を取り出すとシュアリー所持の槍へと形を変える。打ち合う槍と槍、刃と刃が交わる度に異質な金属音が鳴り響く、シュアリーの刺突を避け、柄での殴打を霧化でいなす。続いて、弧を描く薙ぎ払いを跳躍でかわすが、そこへ螺旋の捻りを加えた一撃がオウガデスの咽喉を貫く。だが、それも霧化により有効打にはならない・・・が、刹那、体をくの字に曲げ後方へと弾き飛ばされた。「余所見はいけないな、ちゃんと俺の方も見てくれよ。」ヤヌスの霧化も間に合わぬ程の鋭い蹴りがオウガデスの腹を直撃したのである。
「ふふ♪どこを見ていようとも貴方の動きは見えませんよ、ヤヌス様♪」着物に付いた土埃を払い落としながら立ち上がるオウガデス。「端から武芸でお二方に勝るとは思っておりません♪」左手にシュヤリー、もう片方の手には懐中時計が握られている。「魔界獣『ダイス』召喚、さあ、ここからが見せ場です♪」突然シュアリーとヤヌスの拳が光を放つ、掌を開いてみるとサイコロ型の魔界獣ダイスがクルクルと回っていた。「自らの定めを決めるのは貴方(シュアリー)と貴方(ヤヌス)♪運命の結果は『貴方だけが知っている』では、張り切ってどうぞ♪」そして、懐中時計の蓋が開き、カチリカチリと時を刻み始める。
サイコロの出た目の効果が発揮されます。もちろん、実際に振るも良し、勝手に決めるも良し、無効にするも良し、選ばぬのも良し、結果はご自由にどうぞ♪1.飲食欲:無性に好物を欲します。(兵士塔食料庫へどうぞ♪)2.歌唱欲:無性に歌い踊りたくなります。(一曲どうぞ♪)3.睡眠欲:無性に眠りたくなります。(どうぞお眠りください♪)4.戦闘欲:戦闘力が上がり、引き続きオウガデスと戦います♪5.金銭欲:無性に金が欲しくなります。(親衛隊賭博場等へどうぞ♪)6.混沌欲:無性に上空にいる竜と関わりたくなります。(どうぞ観覧席へ乱入してください♪)
王都の目抜き通りを軍馬が駆ける。騎士の黒いサーコートは千切れんばかりに激しくたなびき、野戦用に軽量化された黄金鎧が鈍く煌めく。灰白色のストーンカ紋様が描かれた褐色の肌、その上に躍る氷長石(アデュラリア)の首飾り、金茶のその眼が見据える先では、幾筋もの光を浴びる山が、山のように巨大な獣が王城ディスパテルに迫っている。呪竜狩りから戻ってみれば、何故あんな化け物がディスパテルに迫っているのだ!事情はつかめないがしかし、するべきことは分かっている。「(―――全力で、あの化け物を迎え撃つ!)」
家屋の残骸が建ち並ぶ王都ヘルハンプール・エリア1、セーラー陛下の居城の方角に眼をやる余裕はない。同志ハルエリエのやさしい笑顔を思い出しかけた瞬間、巨獣が城壁への攻撃を開始した。軍馬は飛ぶように駆け続ける。飛べぬ我が身をもどかしがる間もなく頭の中で巨獣撃退の戦術を練り上げる。上空にはアークダイナソア、一刻の猶予もないようだ。短く歯を食いしばり、口の中で何事か呟き始めたその時、今度は破壊された城壁が元の姿に戻った。状況が一層分からなくなる一方で、胸騒ぎは心臓の鼓動をさらに早めていく。
エリア0に入り、視界が開ける。サーチライトで照らされた人影、それに向かい突進するべく正門からあふれ出る衛兵達は一人、また一人とのけぞるように倒れていく。引き抜かれる剣の音、衛兵達の怒号に混じって、乾いた破裂音、金属が撃ち抜かれる音、そしてこれは―――笑い声。狂気ではなない、理性に基づく笑い声。理性で笑い別の意図を隠しているのか、単に理性で喜びをかみしめているのか。おそらく後者、あるいは両方か。完全に覚醒した状態で寝言を言うが如く、精確な射撃を行いながら内からの喜びを隠そうともしないあの影は、かつて "最も革新的で、最も残忍" と謳われた―――
ちらりと赤い光が見えた。あれは眼光、こちらに気付いている。しかしその手は休むことなく衛兵を撃ち続ける。罠か。迷っている時間はない。剣に手をかけ、意識を集中する。衛兵が急に統制のとれた動きを始めた。盾を構え、陣形を組む。先頭に立つのは他とは違った鎧の一人の衛兵。かつて、時の公国軍軍団長ライル・エンロードにより発案され、公国内から魔法耐性を持つ騎士達を集めて編成された親衛隊下部組織「名も無き防衛兵」。今現れたのはその―――誰だったろうか。名も無き防衛兵は全員知っているはずなのに、あの騎士の顔には見覚えがない。
そのささいな迷いが衛兵への指示を遅らせた。集まるな、その男の攻撃は魔法耐性では防げな……!閃光が衛兵の一団を包み、炸裂した。軍馬がいななき前足が宙を掻く、ジュリア.はすぐさま馬を飛び降り地に伏せる。眼前に落下した衛兵の盾を手にとり、愛用の大剣を鞘から引き抜く。国定装備「アブソリュート・ヘル」。従兄である士貴によりデザインされ、ゼフィル・ゼルファから授けられた燃え盛かる魔大剣。片手で振るうにはやや重量過多、しかし全身を使えばカバーできる。何より、魔法の炎をまとって赤熱する刀身は、剣撃を防がれても炎が防具を透過して肉体を直接に焼く。
この盾であの銃撃を防げるのは一回か、せいぜい二回。あたりに散らばる盾を拾いながら正門へ退き、障害物の多い城内での戦いに持ち込む。しかし、ラデルの間合いに入って来たなら盾を捨ててこの場で。立ち上がろうとしたところに銃撃、盾で弾く。着弾角度がよかった。右後ろの盾へ跳んだところでさらに銃撃、また盾で弾く。盾が割れる。次の盾を構える。遊ばれている。見れば先の名も無き防衛兵が足元に。腰の虫型の装飾品をすばやく自分の腰に貼り付けながら小声で問う。「…何があった」。 硝煙と紫煙の強い香りが、この "化け物" の正体を告げている。
突然の宣戦布告。王宮にまで聞こえる地響きは間違いなく彼らだろう。周りにいる兵たちに動揺が走る。「閣下!いかがなさいますか!」執政補佐官が聞いてくる。さすがに兵たちとは違いすぐに反応したが、その顔には焦りの色が見えていた。当然だ。英雄が敵になって帰ってきたのだから。ならば私がとらねばいけない行動は「国民の避難を最優先。後はまあ…なんとかなるでしょう」手にかいた汗に気づかれないよう、普段と変わらない様子を見せつけることだろう。私の暢気な言葉でも気休めにはなったのか、執務補佐官と兵たちはすぐに避難誘導へ散って行った。
(なんとかできるんだろうか)兵が去った後、椅子に座りながらふと思う。相手が相手だけに弱音が出てきてしまう。(いや…なんとかしないといけないのか)杖を片手に立ち上がりながら考える。私が後を任されたのだ。なにが起きてもなんとかしなければいけない。それがたとえ私に後を託したその人の行動でも…だ。(だとすればまずはどうする?)考えがまとまらない。だが地響きは確実近づいていた。(こういうときは…まず動いちゃいますか)動きながらでも考えられる。始まれば行動あるのみ。送られてきた味噌田楽をほおばりながら部屋を出た。
大きな衝撃音が響き渡る。音の発生個所はどうやら城壁のようだった。「相変わらず、派手ですねぇ。」兵に国民を安全な場所へ避難させるよう指示をして次の行動を起こす前にこれだ。「困ったものです。」そう呟きながら窓に近づく。中庭も城壁もほとんど見えないその窓枠から「花火は上空に打ち上げないとだめですよ。」大きな火球を空高く放った。これは狼煙。そして返事だ。(まあ、こんなことをしないでもヘルハンの国民は対応してそうですがねぇ)
瀑布の如く倒壊する城壁。暴走ベヒモスと、つかまったままの二人は中庭へと躍り出る。コントロールを失ってもこの高さ。手出しが難しい状況に変わりはない。このまま頭上に残って敵を引き付け、戦力を削るか、それとも混乱に乗じて城内に侵入するか?「シュア」ヤヌスの呼びかけに視線を走らせる。あの霧は。「お帰りなさい、ヤヌス様、シュアリー様、そして城外のヴォルフ様♪」……いま一番厄介な奴が来やがった!「魔界獣『ホワイト』召喚、その全てを無かった事に修正して見せましょう♪」この俺をして、計測すらできない魔力がオウガデスの取り出した小瓶に集束していく。オイオイオイオイ何なんだよこれは……!
「飛ぶぞ!」反応が遅れた俺の襟首をヤヌスが掴んで跳躍する。宙へと吸い込まれる俺の視界が、まるですべてが冗談だったかのように白く塗り潰された。ベヒモスが完全に精神防御を突破され、土塊に還って中庭を埋め尽くしてゆく。落下の間に俺は不意の混乱から立ち直る。彼の出現も、そのレベルの違いもとうにわかりきっていたことだ。今更崩されはしない。そう、わかっていたことだ。オウガデスは狂っている。着地と同時に一気に間を詰める。連撃で注意を引き付け、――合わせろやヤヌス!応とばかりに蹴りが入った。速度は有効か……?
オウガデスはだがダメージを受けた様子もなく、着物に付いた土埃を払い落としながら、「端から武芸でお二方に勝るとは思っておりません♪」にへらと笑う。「魔界獣『ダイス』召喚、さあ、ここからが見せ場です♪」これは。手中で光を纏いながら回転するダイス。ヤヌスの下にも同じ物が召喚されたようdざざ……――と、視界にノイズが奔った。『束の間の励起』が終わった。ぐらりと体が傾いて、なんとか踏みとどまる。魔力が一気に底をつく。前借りした全てが徴収されていく。マナの砂漠に放り込まれたようだ。掻き毟りたくなるほど体の奥が渇くのに、手足の感覚が急激に朧となってそれも叶わない。
全能感が那由他の彼方に散り散りと消える。俺は喪失した。歪む聴覚に道化魔の声がかすかに届く。「運命の結果は『貴方だけが知っている』」ああそうだとも。振り絞れ。今宵の宴はまだまだまだ……!黒槍を掲げて、告げる。かの手にある瓜二つの刃を見据えながら、「折角なので告げておきましょう。銘は『B3M』。外法の枝、黒き月の涙。真似られるものならどうぞご自由に。それでも"この槍"が、――お前を倒す」振り絞った。ちゃんとドヤ顔になっただろうか。ああ、限界。もう無理。無理マジ無理。ごめん。寝る。左手から賽子が零れ落ちて、土に半ばまで埋まった。出目は『6』。混沌へ、ようこそ。
無意識の海に墜落しながら最後の力で右腕を振るう。狙うはヤヌスの摘んだもう一つの賽子。どうせ闇に落ちるこの身なら、呪いをまとめて受け止めてやる。届け。行け。繋がれ。ああ、ぬっさんすまん、あとは頼む。右腕の感触が消えて、結果はわからなかった。ただ出目の呪いに猛烈に突き動かされて、なけなしの力が搾取されていく。強制された意思の下、倒れながらも言葉が引き出されて、ついに零れた。「……ああ、美少女……美少女が懸命に俺を応援する姿を見た……い……」ああ…………これただの本音じゃねーか……。そして夜が暗転した。
痛ってぇ・・・シュワめ、なんて短気なやつだ。 とりあえずおまえら俺を置いていくな!追い付こうと義翼を広げる ・・・ ・・・・・ ・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・アレ?飛べない。面白半分にベヒモスに魔力を注いだが為、出力が足りなくなっていた。 ま、まってー!走って追いかけるこの男、一応…首領である。
――――――!!ベヒモスが城門を突き破る。瞬間、中庭があるであろう場所が白に染まり、ベヒモスの気配が消える。続いて火球の塊が撃ちあげられた。 アレは、デス師匠と・・・へぇ、マユキか。走る足を止め、煙草に火をつけ直す。 俺からの返答だ、受け取れ。腰を据えて身構えると、機械化された四肢から無数の砲口が現れ、数十発の砲弾と数千発の銃弾を王城へ放った。次々と衛兵が倒れていくなか、1人、落ちた盾を拾っては捨てて銃弾の雨を潜り抜ける女性兵の姿が見えた。 ジュリア.さんか、楽しくなりそうだ。紫煙と硝煙の舞うなか、にやりと笑みを浮かべた。
尚、格好付けているがこの男、つい先程ベヒモスから蹴落とされた間抜けと同一人物である。
地上を遥か下に見下ろしながら巨獣の上に立つ砂を岩を土を膨大な魔力でその全てを纏め上げ、魔獣を依代とし、巨獣は進む今これは、男子の原初たる征服欲を満たすのに十分な状況。その気がもし無くとも、卑下な気持ちが口端を釣り上げる。このままこの巨躯の上でただ笑っていようかと、そんな気持ちを打ち砕いたのは他でもない、直ぐ横にいる義父だった。「てめ、ちょ、嘘だろ、何やってやがる!!」暴れる凶獣。伝説の剣を持った巨人が駄々っ子になったほうがまだ可愛げがある。元凶を作った本人は、いの一番に蹴られ、振り落とされて城門前。知らん、助けん、そのまま踏み潰されてしまえ。
中庭に降りて、一息とはならず。最初はわけも分からずシュアリーの襟首を掴んで飛んだ。理解するのは後でも良かった。ただ、いきなりとびっきりの危険を感じた。飛ぶ理由はそれで十分だった。空間が、時間が侵食され、強引に戻される。禍々しいほど白い、神の慈悲を無理やり押し付けられてるような、そんな感覚。その神は、ある意味一番会いたくない男だった。「のれんに腕押し」と言うが、押すのが腕だろうが槍だろうが炎の鉄槌だろうが全てを受け流す。オウガデスあんた、ほんと敵にまわすと厄介だよ。だがな、それでもやらなきゃならん。戦いってのはそんなもんだ。
シュアリーが作った隙に蹴りを叩きこむ。タイミング・角度・威力共に暫く起き上がれない位のをかましたつもりだったんだが。俺の蹴りってな、土汚れを付けるだけのもんじゃあないつもりでいたんだが。着物をさっと払うとにっこり笑いやがった。 神じゃない、やっぱバケモノだ。手の中に感覚。光る拳。見ると、その手にはサイコロ。「自らの定めを決めるのは貴方(シュアリー)と貴方(ヤヌス)♪運命の結果は『貴方だけが知っている』では、張り切ってどうぞ♪」ここは一つ乗ってやろうか。そう考えた瞬間、視界の端の影がぐらりと動いた。
マズイ!このタイミングでシュアリーのブーストが切れやがった。とっさに駆け寄ろうとした時。振り絞る、弱々しくもはっきりと。己の芯を相手に告げて、最後に俺の右手の中を掻っ攫うように動かして良い顔で落ちやがった。一つ残念なのは、俺の掌の中のサイコロはそのままだということ。シュアリーの腕が届かなかったのか、魔力で既にひも付けされていたからなのか、兎に角掌の中のサイコロは「5」の数字を出して止まった。湧き上がる思い。下衆な、この戦いにおいては最も下衆な感情「金欲」がものすごい勢いで湧いてくる。
分かってる、これが目の前の男の力によって生み出された感情だと。だが抑え切れない。 人の心までも操るのか、この男は。その意味を思って、湧き上がる感情と同じくらい、ゾクリとした。「後で、また。 次は斬らせて貰うぜ」今はそれを言うのと、シュアリーを抱きかかえるのが精一杯だった。今ここで追撃されたら多分堪え切れない。だから今は全力で逃げる。久しぶりとは言え時に笑いながら時に泣きながら時に血反吐を吐きながら何度も通った道だ。迷うことはない。「神突撃」感覚が変わる、世界と時間が俺の後を付いてくる。体を捻らせ、足を地面に叩きつけて、一路親衛隊賭博場へ。
中庭を南に抜けて城門塔の2階へ途中、城門前で騒いでるのがチラリと見えたが、あっちは任せよう。そもそも自分が巻いた種だ、俺は動けないほど歳を食ったわけでもない親のケツを拭くほど孝行息子じゃない。それに、助けなくとも大丈夫という信頼がある。否、確信がある。群雄割拠の世をくぐり抜け、どんな大国とも渡り合ってきた外交官としてあの四肢から繰り出される威力を俺は知っている。大丈夫、心配するだけ無駄だ。ゾルダート家筆頭の名は、伊達じゃない。2階に飛び込むとすぐさまバーカウンターの下にシュアリーを寝かせ、自分は部屋が一番見える、ビリヤード台横の椅子へ。
体を酷使して感覚を上げた代償単純に言えば疲労困憊。ただし相棒はもっとグロッキー。さて、こちらが回復するのが先か、会敵するのが先か。剣を抜き、床に突き立てて杖のように体を預ける。かくれんぼのように、いつまでも見つからないなんて思っちゃいない。誰が来る?どんな索敵をし、どんな攻撃をしてくる?そもそも正面から来るとは限らない。いきなり天井をぶちぬいてくることだってありうる。思いだせ、戦場を。古い記憶を頭の真正面に持って来い、俺ならどうする?どう対処する?血飛沫の中、泥をすすって生きてきた、その感覚をもう一度。
「ほほう、この槍は『B3M』というのですね♪使い勝手は良いものの使いこなせそうにはないですね♪」オウガデスはB3Mを元の丸い何かに戻し、懐中時計の蓋を閉じる。「さて、あの二人は陛下にお任せして♪私は大将首を頂戴しに参りますか♪」誰に言うでもない呟きを残して再び霧となりこの場を去った。
状況はわかった。凍牙の三傑が攻め入ってきた、と。しかし動機がわからない。何が狙いだ。ヘルハンプール公国の再興/独立、ディスパテル破壊による郷愁の破壊/旅立ち、あるいは、たちの悪い冗談か。昔からわからない人だった。私はセーラー陛下、そしてこのヴォルフ=ゾルダート卿と言葉を交わした記憶がない。かつての公国の、原点にして頂点であったこの二人を理解しないままに私は公国に仕官し、愛し、守護してきた。公国の枢軸がどのようであれ、そこに集う国民が、旅人たちが素晴らしい人々であれば公国自体も素晴らしい、命を懸けて護るに値する、私はそう考えてきた。
その公国を私とは違ったやり方で、私よりも長く、私よりも高度な手法で護ってきたこの人は、言葉を交わすことは無くとも同じ志を持った戦友、"同志" だと思ってきた。しかし、かつて御祖父さまが「息子」と呼んでいたこの人が、私の最も尊敬する将星二人を率いて襲来し、今は純白の美しい城壁に無数の銃弾を浴びせている。―――私は、どこかで道を誤ったのだろうか。否。たとえそうであったとしても、私が退く理由にはならない。私には、今でも護りたいものがある。ここに。それを護るためならば……!!
次の手に打って出ようとした時、状況が大きく動いた。ヴォルフ=ゾルダート卿が立ち上がり、こちらに(正門に)向かって動き始めたのだ。アウトレンジ戦法を捨てたか。何か、攻略に時間を掛けてはいられない事情があるようだ。思わず口元から白い歯がこぼれる。一見無防備に、一歩一歩進んでくる姿には威厳と余裕が感じられる。盾を構えて下がりつつ、卿との距離を縮めていく。卿がラデルの範囲に入った時、勝負をかける。ラデル五段のうち、二段を前方への超跳躍に使って三段でアブヘルを振るう。四肢の全てではなく、三肢を狙うとは思われないはず。三肢を切断できれば渡り合える。
三肢を斬りそこなったとしても、接近してさえいれば私にも勝機がある。さあ来い、すぐ来い、ここに来い。内から湧き上がる闘志、アブヘルが放つ熱気、そして夏の夜のむせかえるような草いきれが、私の胸を締め付け、集中力を倍加させる。弾むように下がり、待つ。さらに下がり、待つ。わざとらしくならないように。あたかも「正門まで下がって同志レイフォールと同志シャルティオーネの援軍を得る」ことを狙っているかのように。はやる気持ちを抑えつつ、眼前の三肢を刎ねる様子をはっきりと思い描きながら。今や頭の中にあるのは「戦うこと、そして勝つこと」のみとなった。
ダラララララララ・・・・・開幕のドラムロールを彷彿させる音が止む。土煙が舞う中、唯一立っている女性兵――ジュリア.親衛隊として城門を守り続けてきた公国軍が誇る精鋭中の精鋭。バシュ右腕から長方形のカートリッジを放出し、即座に懐から新たなカートリッジを装着させた。じりじりと下がる彼女に右腕の銃口を向け一発、また一発と、射撃を繰り返しながら距離を詰める。 ジュリア.さん、久しぶり! 元気そうで何より! それはそうと!射撃の合間、笑顔を見せて一言一言語りかける自分に、彼女は戸惑っているようだ。 …ここ、通してくr
言い終える前に、彼女のラデルが炸裂。それは標的に向けられたものではなく、跳躍に使われ瞬時に懐に詰め寄られると炎のように赤い剣による高速三連劇が繰り出された。彼女の動作、視線、表情、気配から何を狙っているのかは読み取れた。自分が魔法耐性皆無という致命的な弱点を抱えている事は公国の者であれば知らない者は居ない。故に彼女がラデルを狙っているのは予想できた。彼女の誤算はそれを攻撃ではなく跳躍に使った事だった。 残念、刃で俺の義肢は断てねぇよ。
三連撃の全てを三肢で受け、彼女の脇腹に残りの一肢を叩きこんだ。 得手不得手で言えばショートも割と得意でね、 ロングをメインに使うのは、、、趣味だ。刃で構成される金属の翼が広げられ "香車翼刃"・・・回転乱舞をご堪能あれ。義翼の刃がジュリア.に襲いかかろうとしたその瞬間周囲が白い霧に包まれる。気配を察するとジュリア.への追撃を止め、即座にその場から距離を空ける。霧の中から現れたのは、ありとあらゆる攻撃を受け流す天才オウガデス。 デス師匠wwwwww
霧の中央に見える人影に駿殺光波を放つと同時に、更に後退。十分な距離を取ったところで身構える。 さて、どうすっかなコレ。ところで先程蹴落とされたこの男、シリアスに振る舞っているが頭にでかいタンコブをこさえたままである。
多数の小さな被弾音。先ほど火球を打ち出した付近か。なるほど。本気らしい。(さて…)本来ならば領主としてはまず後方の安全な場所へ移り指揮をとるべきなのだろう。頭ではわかっていた。だが…気づけば王宮を出て中庭に行こうとしている私がいる。(臆病な私が陣頭指揮をしようなんて…触発されてしまったかなぁ)師匠が笑っているような気がした。
中庭に出て、私がとるべき選択肢はいくつかあった。・激しい戦闘が起きている城門前で戦闘に加わる。・城門塔の上に移り状況を確認する。・兵士棟へ行き反撃のための準備をする。・図書館棟で調べものをしながら夜明けのカプチーノを飲む。私が選んだのは…
乱戦の気配がある城門前はさすがにリスクが大きいし兵を動かすには情報が足りない。まずは状況を、そう判断して城門塔へ入ったはいいが…二階に登ってから気がついた。殺気を押し殺した気配があることに。(いやはや…ツイてない)相手は…逃がしてくれるほど甘くはないだろう。ならば…「ようこそヘルハンプールへ。」先手を打つしかないだろう。挨拶と共に部屋の中へ大量の火球を打ち込んだ(まあこんなの挨拶代わりにもならないでしょうが…)
瓶に入っていたのは琥珀色10数年の時を、ひたすら木の枠の中で眠りほんの少し、天使に分け前をあげてから、この世に出てきた。・・・・唇にピリっとした刺激を受け、喉に流しこむとどっしりと味が主張し飲み込んだ後に、鼻からピートと木の香りが抜けてくる。嗚呼、これが酒なのだ。バッカスの生み出した嗜好品、贈り物。死ぬその日まで、毎晩愛でたとしても飽きぬ。もう一口。再び抜ける極上の香り、そして指先にくる僅かな振動。振動・・・来たか。気配を読む。オウガデスが追ってきたか? いや、違う。彼は絶対に真正面からなぞ来ない。万が一来たならば、100%罠があると見ていい。
親衛隊か?多分その可能性が一番高いだろう、親衛隊を任せられるほどの手練なら、俺が気配を潜めていても気がつくはずだ。部屋の正面から来る、搦手を使わないことからも腕にはそれなりの自信がありそうだ。幸いにも一息つけたぶん、ある程度の戦闘をするのには問題ない程度には回復した。さあ、行こうか。椅子から飛び上がるように地面を蹴る、翼で空気を叩き、剣を構える。同時にドアの向こうから魔力が跳ね上がるのが剣を通して伝わって・・・大量の火球が出現ざっと見ただけで20は軽く超える振りぬく真っ白の剣反魔力錬鍛剣「アビシニアン」はその一つ一つを「斬って」いく。
刃全体に込た反魔力素材・退魔陣の力により魔力を具現化・物質化させ、切る。自慢の剣、戦場においての最愛の妻。2秒とおかずに全てを切り落とし、腕にくる心地良い痺れ。魔力を切る事ができるとはいえ、万能なわけではない。物質化させることにより、魔力は「質量」を持ち、その強さが刃に対しての抵抗となる。野球のバットでピンポン玉は打てても、ボーリングの玉は打ったとしても腕がやられる。ソレと一緒だ。火球を多重展開してこの威力、生粋の魔術師では無さそうだが、それでも十分。やはり親衛隊クラスか。煙と炎のゆらめきで霞む顔に一撃。挨拶という程では無かったにせよ、しっかりと受け止められる。
正直、顔を見た時驚いた。「随分と玉座がお嫌いですかい? 国王陛下」目の前にある顔はこの国の国王である「マユキ」その人。一瞬の驚きは隙を生み、相手が見逃してくれるはずもなく。剣ごと押し返され、更に追撃。振り下ろされ、逆袈裟で返され、尚も剣撃。面白い、国王自らの出迎えとは、国賓扱いじゃないか。ならばこちらも歓迎に対してお礼をせねば。一時下がった隙に斬撃でリズムを刻む。ビートは2ビートから一気に16ビートを越えて。ダンス・ダイブ:ファーストトラック「斬嵐」斬撃が体を包み、そのままマユキに突進。俺の自慢の攻防一体の技、如何ですかな、こんな返礼は。
庭のテーブルの上、手紙を見ている自分にはっと気がついた。「どうかされましたカ?」訛った語尾とともに、兜の面がこちらを覗き込んでいた。あれ、俺は。「いや……すまん、少し呆けていたみたいだ。夢を……」夢?「今日の夕刻からご友人とのご旅行とお聞きしましたガ、もしや体調が優れないのでハ?」「いやいや、そうじゃない、本当にちょっと物思いに耽っていただけ。大丈夫だ」「それならばよろしいのですガ」言いながら、彼女は湯気の立つ銀のトレイをテーブルに置く。ゴルデン産の豆を挽いたコーヒー。この豆はあの人がよく買ってきてくれたっけ。
焼け跡のエジューに俺は立っていた。「終わったの?」彼女の声が聞こえる。「ああ、終わった。ようやくというか、あっけなくというか……」執務室の机に突っ伏しながら、まるで老爺が風呂に浸かるときのような声で答える。疲れた。言葉の中身だけでなく、その襞や届け方、そして身振り手振り、目線。表出する全てに気を張れ、というのは、なかなかに暴力的な要求だ。『領主シュアリー』、ね。はいはい、お疲れ様、俺。ああ、お疲れ様、私。彼女は艶やかな黒髪をなびかせながら、部屋の開け放った窓枠に腰掛けて雪景色の城下を眺めている。
ジャピトス‐ディアルゴ国境線からジャピトス側に下がること数里、高台に張った凍牙遠征組の陣に俺はいた。ここからは主戦場となったディアルゴがおおよそ一望できる。《戦況……周りの様子はどうだ?》《ぐちゃぐちゃね》脳裏に問うた言葉への答えは簡潔だった。《しばらく歩いて見たけれど、どっちがどっちだかわかりゃしないわ》戦火の群れと、遠い怒号に包まれた島々。デルフィナが諸島を支配下にして日は浅い。《死体。死体。死体。折れた鉄屑。腕。死体》彼女が呟く。《波打ち際にはあまり寄りたくないわ。服がべっとりになりそう》《他には?》《もっと聞きたいの? こんな言葉が》
俺は粛清後、開国したばかりのカイゼルオーンにいる。既に五月も終わろうとしているのだが、ブーツの裏側をつつく感触は未だに霜柱のそれだった。眼下の景色では白以外の色が三割にも満たない。白雪で出来た山道はそれ以外と区別がつかず、脇に立つ、一年のほとんどを葉を纏わずに過ごす木々が唯一の道標である。吹き曝しの、傾斜の緩くはない坂道を、俺は彼女と歩いていた。「何か感じるか?」歩きながら前方の彼女にに尋ねる。「そうね――」彼女は俺に鷹揚に振り向き、「きれいになったわ」「何が?」「色々」霜を踏み潰す音が辺りを支配している。振り向けば二人分の足跡が白く延々と続いている。
俺は反体制の一員として、悪夢の幻影に崩されゆくカイゼル城を暗い小部屋から食い入るように見ている。壁際に備え付けの、背凭れの硬い椅子で伸びをすると、ぎしぎしと音が鳴った。遠く地響く衝撃の音に空気が揺れる度、低く冷たい天井から埃が舞う。自然と拳を握り締めていたことに気が付いて、俺は腕を前触れも無く振りかぶった。行き場を無くした腕を引き寄せて、壁に繋がった机上で頭を抱えながら、きつく眼を閉じた。寒気も地響きも、何一つ追い出せなかった。当たり前だ。クソったれ。……ああ、クソったれ! こんなことばかりだ!!呟きですらない何かが口の端から漏れ出て、誰にも届かなかった。
俺はバルハラをまた彼女と歩いている。自分が何者かになれたような気がして、「世界に飽いて仕方の無い魔王が、羽虫に歌でも歌えとさ」俺は笑っていた。「アンタは取るに足らない有象無象で、しかもさっき言ったわね」「そう。『厳密にはそういうわけでは無いかもしれないがしかし違うとも言い切れない。そういう御招き』。もしかしたら俺の恥ずかしい勘違いかもしれない」「そのときは?」「ま、帰るよ。――石を投げられ、口汚く罵られながら。後ろ指を指され、仇敵のように呪われながら。誰も彼もに笑われて、帰る」そんな絵が目に浮かぶのに、なんだか可笑しくて仕方無い。「あは」彼女が少女のような笑い声を零す。
俺はフレッドバーンを彼女と歩いている。「御名前を出されて宜しかったのですカ?」甲冑の彼女が聞いてきたが、「ああ。別に疚しいことをしようってわけじゃないんだ」「いエ、……差し出がましい発言を御容赦頂きたいのですガ、しかし、私が申し上げたいのハ」「遅かれ早かれ俺の名は知られる。それが目的でもあるんだし、余計な嘘で瑕をつける意味は無い」「……畏まりましタ」門の向こうに、王権の象徴たる王宮が見えた。華美な装飾のそれは、質実な祖国のものとは似つかなかった。だが、同じものが見える。『眼を閉じて過去を想う』。そういうのは、もうしばらく無しだ。
俺はヘルハンを捨てた。同居人との別れを済ませたあと、家のものを適当に処分した。といっても、そのときには既に、俺の持ち物以外は大したものも無い状態だった。いつの間にか、この家はこんなにも空っぽになっていたのだ。俺の気付かない間に。荷物を保管場所に送り、家を守っていた結界と加護を解いて、火を点けた。あっけないほどあっという間に火が回って、家は燃えた。木材の爆ぜる音や柱の崩れる音は、小さすぎるほどにしか響かない。思い出が燃える。思い出が、終わる。
俺は逃亡兵を、背任したヤヌスを殺そうとしている。「っぐぅ……!」右の脇腹を左手で押さえる。こぼれそうな腸の重みにも吐き気すらしない。右手の力は抜いてはいけない。痛みで意識を戻したときには、ヤヌスに馬乗りになって互いに刃を鍔迫り合わせていた。点の触れ合いに、全力を込めた腕がぶるぶると震えている。背中の熱を雨が奪っていた。雫の感触は無い。感覚は既に死んでいる。「……何故、だ」言葉は自然と漏れていた。「何、故、今更こんな」「今更? ――笑わせるなよ。『俺は俺の生き方を』。ただそれだけのことだろう」口を歪めて笑う。「お前はどうなんだ? “公国護剣”。――お前、今のままでいいのか」
俺は公国軍兵舎にいる。救護室に彼女が眠っていた。質素な造りの部屋にはベッドが一台。開いた窓から風が動かしたのか、ベッドを隠すためのカーテンが半ばまで閉まりかかっていた。次の親衛隊は冬弥、か。寝顔を見ては失礼だ。早々に済ませて退散しよう。(――御疲れ様でした)カーテン越しに礼を捧げる。誰も知らず、誰も気付かず。ただ虚ろな誇りだけを積み重ねていく。俺が背を向けたのと、「ありがとうございます。同志シュアリー」声は同時だった。「すまん。起こしたか」「いえ。何か、寝付けずに」「痛むか?」「この程度は十数年来の友人です。――そうではなくて」部屋を月が照らしていた。
俺はレオプール辺境伯とHBFを観戦していた。地下闘技場・玄武観戦席。透明な防護障壁の内側。「お座りになられては?」「君まで私を年寄り扱いするのかね?」男はこちらに振り向きもしなかった。ゼフィル・ゼルファ。公国軍の重鎮にして、この闘劇における主催者の一人でもあった。気難しく、冷酷で、理不尽。目の前の老指揮官の評価は、兵たちの間では全く芳しくなかった。だが、彼が軍人として積み上げてきた全てに、自分ならば応えられる、と。そんな増長があった。打ち砕かれるまでに長くはかからなかった。「あの口さがない若造は誰だ?」と彼が吐き捨てるのを聞いた。
俺は攻防師団合同演習の真っ最中にいる。状況は思っていた以上に複雑なようだ。竹林の枯れ残りを焼き飛ばした炎の壁は、間違いなくライゼルのものだろう。炎の強力さと、何より義父はあの手の術が大好きだから。オウガデスの緑砦は炎と戦場の混乱によって進軍が遅れている……、いや、俺が少し急ぎ過ぎただけか?昔からこの手の連携はどうも苦手だ。こちらから合わせようとしても、どこか動きが噛み合わない。協調性が足りないとはよく言われるが。ライム隊は魔霊樹の気配に気付いて後退したようだ。竹林の暴走の直撃を受けた残りの部隊は、そのさらに後方、竹林の向こう側でハルエリエ率いる冥土部隊の治療を受けている。
俺はゼロスパイア討伐を放り出して、祖国の対ネウガード戦に参戦している。相変わらず風は冷たい。北進するほどにこれが強まっていくと考えると、兵達の消耗は想像に余った。帰国するなり、自分は一足早く帰還していたヤヌス団長、そして彼率いる近衛騎士団に合流し、先行している親衛騎士団のもとへ向かっていた。一応部隊長という名がつけられてはいるが、自分の下に兵はいない。自分には、人の命を負う力がないと思っていた。暗紺色の、見慣れた、見慣れていたはずの戦衣。袖を通すのを一瞬躊躇って、それでもやはり着る。遥か前方から戦いの咆哮が聞こえる。あの中に、きっと義姉もいるのだろう。
俺は庭のテーブルで紅茶を楽しんでいる二人を眺めている。物干し竿にはためく白いシーツを背景に乙女たちが笑い語らう、映画のような美しいシーンが流れていく。二人の視線がちらりと俺を見て、また互いに目を見合わせて笑う。俺は会話に入りそびれて、気まずさを隠しながら軍靴を磨いているふりをする。それを見て、また二人が笑う。ああ、暖かい。初夏の日差しに包まれて、こんなに暖かい場所はなかった。熱が上がり続けている。あの日の午後は、こんなに暑かっただろうか?近づきすぎた暖炉のように、熱が肌を焼いていく。炎が、俺を呼んでいる。俺の名を呼ぶ声がする。ここは、どこだ?
ヴォルフ=ゾルダートより発せられた駿殺光波がオウガデスを襲う。出現時を狙われたのはいつ以来でしょう、隙をつくというより意表をついた一手ですね。霧の収束中に分散回避するのは霧の制御不能に繋がる為、それは避けたいところである。急遽、手を翳し魔法障壁を展開するが駿殺光波を完全には防ぐこと適わず、オウガデスの右手を木っ端微塵に吹き飛ばす。「おやおや♪これは思ったよりも威力がたか・・・!!」だが、駿殺光波の恐ろしいところは威力ではなかった。右手の再生を試みるが、再生どころか傷口部分から徐々に腕を蝕むように破壊していく。「くっ!」
緊急手段の断行。左手刀で肩口から右腕を切り落とし魔力破壊効果の侵食を遮断する。「ふふ♪これは驚きました♪」まさに驚愕です。当たり所を間違えれば一撃で殺されてしまう、技名に殺の字が含まれているだけの事はあるようですね。「首領だけに首の取り甲斐がありそうです♪」オウガデスは『マルイナニカ』をヴォルフの右腕へと変化させ、お返しとばかりに駿殺光波を放つ。バシュ、ガンッ。確かな手ごたえを感じていたはず、確かに着弾したはず、だがダメージを与えた様子は無い。「おや?効果なしですか?そうですか♪」
遠距離攻撃が通用するなら霧化での全方位攻撃を考えていたのですが、通用しそうに無いとは驚きの連続ですね。「どうやら私一人ではヴォルフさんを倒せそうにありません♪やはり、ここは黄金の守護者の御力を借りるとしますか♪」右腕を再生復活させ、武器を『公国護剣アブソリュート・ヘル』へと変化させる。油断無くヴォルフへ向け剣を構えるジュリアの横に並び言葉を交わす。「同志ジュリア.どうやら防御力の高いヴォルフさんには魔法での攻撃が有効そうですよ♪守護剣に熱いくちづけを♪」オウガデスの唇が刃に触れると、そこから朱が走り、やがて燃え盛る炎が剣に燈る。「さあ、ともに踊りましょう♪業火剣嵐共闘乱武を♪」
牽制で放った瞬殺光波がオウガデスの右腕を吹き飛ばし、傷口を蝕む。少し驚いた表情のオウガデスを見て、一抹の手応えを感じるも、それは油断である事に気を引き締め直した。冷静に肩口を自らの手刀で切断したからだ。「ふふ♪これは驚きました♪」あまつさえこの余裕の口ぶり。その仕草からは何も読みとる事はできなかった。 ならば今度は狙いを定めて―…照準を定めると同時だった。オウガデスの手にある球体から身に覚えのある光の線が一直線に向かってくる。咄嗟に義手を交差させてソレを防いだ。 まさか自分が光波を受けるとは思わなんだ。交差を解いて再び照準を合わせる。
義眼から見えたもの。オウガデスの肩口から肉が盛り上がり、みるみる腕が再生されてゆく。しかも公国護剣まで手に取り、横に並ぶジュリア.と一言二言小声で話すと照準の中に二つの視線が突き刺さって―…「さあ、ともに踊りましょう♪業火剣嵐共闘乱武を♪」燃え盛る二対の公国護剣が我が身を襲う。軌道を読んで回避しようと試みるが、雑魚の二対とは質が違う。この剣を振るう2人は個々が一騎当千の雄なのだ。交わしきれず、一閃、もう一閃と刃を浴びる。 ちょ! 煙草の火は もう点いてるから 火は 要らない って!衣服が焦げ、刃を合わせた義肢に亀裂が入り、生身に火傷と切傷が刻まれてゆく。
しかし即席コンビ故に僅かなリズムのズレが生じたか、それが幸いして致命傷だけは受けずに居た。とはいえ、一騎当千の2人の斬撃である。みるみる体力が消耗していく。 あ″−−−−、ウゼェ!!!叫び、ガシリと無造作に二対の刃を鷲?む。両の義手からみるみる全身が炎に包まれ・・・・ ゴワッシャー!!!半身半機の身体が紅く眩しい閃光を放ち、異形の姿へと変わった。『漢獣化』カイゼル髭とサンバイザー、きらりと輝く頭になびく一房の毛がチャームポイント。全ての物理攻撃を受け止め、あらゆる魔法を受け止める鉄壁にして剛腕のケダモノ。
機械化されていた両の腕は、大木のように太く、血のように赤い筋肉の腕と化し、手にする剣を握り砕く。 ガァァァァァーーー!!猛るケダモノの雄叫びで空気が裂け、生じた衝撃波によってオウガデスとジュリア.が吹き飛ばされた。続け様ジュリア.に追撃。上からハンマーのような一撃を加えると何度も何度も何度も飽くことなく両の剛腕を交互に叩き下ろし、衝撃でみるみる周囲が土煙に覆われた。それが何秒いや何分続いただろう。突如手を止め、後ろへ飛び退くと同時に元の半身半機へと戻り、土煙の”中身”を確認せずに、更に遠く後方へと退いた。 ジュリア.さんの手応えが、いや、2人の気配が消えた?
左の義手を外して右腕の先に装着。『義眼、Mode:Blue』赤い義眼が青へと変化する。 どこだ、一体どこに消えた? …まずは状況を把握しろ。 義息子は、シュワは? キュイ と無機質な青の眼球が動き、目標を探し、連結され狙撃砲と化した義手を構える。 つーか、やっぱ2人はきっついワー。尚、ぼやきを呟くこの男、実は黒コートの下は漢獣化により破れて素っ裸、つまり一歩間違えなくても変態のソレである。
ボトルケースに差し込まれた、色とりどりの空き瓶が目に入った。身動ぎするよりも早く『風読み』。範囲、半径2km。 分かった。ヤヌスの斬り落とした炎熱の余波が親衛隊室の空気を歪ませている。感覚を確かめる前に身を起こす。行ける。術が半端に終わったおかげで負荷もひとときで抜けている。 ヴォルフとの距離744。仰角15度。 対象との反射角、大きく鈍角。勢いのままヤヌスが機先を制さんと連撃。敵は。だが無視する。任せる。集中する。急速な精神の相転移。跳ね転げる魂と欲動。血の律動。支配、観測、改竄、励起。一度眠った子を起こすのは気が引けるが。 この位置関係なら。
ダンス・ダイブ2nd。今宵一夜の夢舞台、ここで踊らにゃ阿呆とばかりに神剣が舞う。背中を任せるのがお前で良かった。いい夢見せてもらったぜ。 ――射抜けるぞ! ヴォルフ!!さあ起きやがれ我が真髄。ここで目に物見せてやれ。もう一度だとも。これが戦いというものだ、さあもう一度!『風読み』、再展開!『束の間の励起』、再起動!『嘩捉U”企投”』再発動、対象は俺の魔術器官たる脳!再展開、『転変U”まよい仔たちのめざめ”』ーー!!大丈夫、次は上手くやれる。動悸息切れ、軽いめまいで済むだろうさ……!
隊室の内側から白亜の美しい城壁に触れる。土塊からベヒモスを喚び出した偽りの覚醒が、ディスパテルの美しい石肌を伝ってゆく。城壁の皮膚がざわめき、隆起し、奈落の仔らを孕んで、呪いのように産み落とす。顎と四肢と尾、土竜と同じ部品を揃え、まったく異なる造形で体高2mの仔竜たちが産声を上げる。城門塔を丸裸にして、孵化した無翼のダイナソアが地に放たれる。獣群、石晶のラプトル。そして開けた。見える。お前もだろ?俺はヴォルフの碧い視線に唇で告げる。 お れ を う て 。鈍色の鋼球、歪曲の星が空を飛んでいる。(隠し:『歪曲衛星』。効果:持ち主の周囲を巡り、飛び道具の弾道を逸らす)
正面玄関、二の間。宙空にジュリア.が現れ、落下した。名も無き防衛兵2から借用した「親衛隊のスカラベ」。いつ何時突破者が現れてもただちに迎撃できるよう、目的地は正面玄関に調整されている。ジュリア.はこれを脱出に使い、(本日二度目の)絶体絶命の危機を逃れた。懐かしの同志・オウガデスの助力を得、ORESアデュラリアの魔力「少しだけ未来が見える」を使っても尚、技や魔法ではなく「力」によってねじ伏せられたことへの悔しさ、恐れ、そして怒り、怒り、底しれぬ怒り。ジュリア.は、声にならない声で吼え、ひとしきり床をのたうちまわると、歯を食いしばった。
血走った眼は怒りに燃え、怒りに震える手足は床をつかみ、血まみれの身体を引き上げた。かつてない怒りに我を忘れかけたジュリア.が、残された最後の理性で選択したのは、古代ストーンカの秘儀の発動であった。秘儀【ジャガーの時代】。古代ストーンカの大神官が石でできた巨大なジャガー像に魂を分け与え操ったとされる秘儀。発動にはストーンカ人の大神官、大神官が永年祈りを捧げた神殿の石材が必要とされる。そして、ここにはそれらがそろっていた。怒り狂う戦士の魂を秘め、今、王城ディスパテルより古代ストーンカの "神" が復活する―――。
崩れゆく城門棟の中から、棟を為していた石材のほとんどを己が肉体として巨大なジャガーは誕生し、高く高く跳躍した。その衝撃は二本の塔を傾け、塔が接続する東西棟を半壊の危機にさらす。鐘楼の鐘が夜の王都に鳴り響く。暗い空に美しいその身を隠そうともせず、大質量の白亜の獣は、ゆっくりと、上昇から下降に転じる。狙うは一点、青い眼でこちらを見上げるあの憎っくき "狼" のみ。その男に守られてきた過去など完全に忘れ、巨大な爪と牙はうなりを上げて破壊を求めている。
先手必勝の不意をついた火球。数多の火球を文字通り薙ぎ払いながら近づいてきたのは「随分と玉座がお嫌いですかい? 国王陛下」公国に響き渡る英雄とは…ヴォっ様め。本気すぎるでしょう。ヤヌスさんも戸惑いは隠せないようだったが一時下がった後は驚くほど冷静に斬撃を刻む。(これは…)一瞬見えたシュアリーさんに気を取られたからか。一気に上げたテンポのためか。突っ込んできたヤヌスさんの斬撃を剣を構えることすらできぬまま受け止め「ぐしゃっ」私の体は四散した。
一瞬の静寂。ヤヌスさんもこれで仕留めるつもりではなかったのか動揺をしているようだった。(目の前に現れたのは現国王で)始まりは小さな動揺だったのだろう。(激しく鋭い剣を振る技量がありながら)武人の心をくすぐったせいで。(技を受けることもできず四散した)想定外の弱さに落胆する。積み重ねはやがて大きな動揺へとつながる。すべてを見通すかのような気配察知が真後ろにいる私を認識できないほどに
変わり身。札を張った範囲へ一時的に幻のマユキを出現させる。その幻影効果は近いほどに上がる。最初の火球はすべて札を飛ばす目くらましにすぎない。範囲的にはシュアリーさんがこちらを見ていれば気づけたかもしれない。そういう意味では彼がこちらを無視したのは運がよかった。「変わり身の私は強い武人でしたでしょうか?」にっこりと笑いながら私は火球を再度放つ。これでもヤヌスさんは止めるかもしれない。だが…。火球に混じりにぶく光る物体。小刀はどうだろう?
違う、違う、違う。分かってる、頭では分かってる。こんな筈はない、この程度のワケがない。目の前で四散した体、玉座に構える者の体。目に写ってるのは・・・・なんだ。「変わり身の私は強い武人でしたでしょうか?」真後ろから囁かれる声。命のシグナルが一気レッドゾーンに跳ね上がる。考える前に本能が動いた。「神突撃」再び体の感覚と速さを上げ、一歩前へ。 そして振り返れ!我が名はヤヌス、公国を速さで守りし者。いかなる攻撃も速さでねじ伏せる。これ迄もそうしてきた、そして、これからも。
振り返って目に飛び込むのは火球。それも先ほどとは比べ物にならない数・威力。それがほんの鼻先で展開されている。蛇の集団に投げ込まれたネズミのように絶望的な数。だが、それでも斬らねば前に進めぬ。俺は斬ってやる。ダンス・ダイブ:セカンドトラック「流針」神突撃で上げた速度に全力の突きの連撃を火球に体に負担のかかる技の同時使用、骨がきしみ、健が悲鳴を上げている。一つ一つの火球を突き、叩き落とし、自らの身体を砕いて尚も火球。でも行ける、俺なら落とせる。それは過信か自信か。己のアイデンティティーに全てを賭けた武人の誇り。痺れる腕に、小刀が突き刺さるまで。
飛び散る鮮血。その血が、周りを見る余裕を与えた。壁が・・・無い。吹きすさぶ夜風、その向こうに見えたアレは・・・・引き上げた感覚が理解した。シュアリーが、義父がやることが。即座に体に命令する。腕に小刀が刺さった以上、この腕で今致命傷を与えることは適わない。左腕で懐から小さな袋を取り出し、目の前に投げる。己とマユキの間に放り投げられたソレは、突きによって中身をぶちまける。その目を、軽い痛みとともに白い粉が覆った。悪いね、戦いは一人じゃ無かったわ。(隠し:目潰し粉「一瞬、周りが見えなくなるだけでダメージはありません」)
・・・どこだ?見渡せど何も無く、無音が鼓膜に突き刺さる。それは直ぐに掻き消えた。掻き消した”音”に視線を送る。ちっこいダイナソアの姿が見えた。…いや2m前後の体躯は十分大きいか。 なんだアレ?敵味方の区別も付かず、狙撃砲と化した腕をちっこいダイナソアに構え、照準を合わせた義眼にシュアリーの姿が映る。《お れ を う て 。》唇の動きを読んだ。 おー…っけい狙撃砲構え直し、空気抵抗によって生ずる軌道のズレを修正。瞬時にミリ単位で狙いを定め、そして撃った。そしてそれは撃った反動を身に受けている最中に起こる。
キュインキュイーン頭頂部の赤色灯が激しく点灯する。ボーナス……!である訳がなく、そもそも頭に赤色灯がないわけで。そんな意味不明な感覚に見舞われるほどの哭き声。「ニ゛ャア゛ア゛ア゛ア゛!!!」身の毛が逆立つ。城門棟の方角、白亜の獣が牙を剥き出しにして襲いかかって来た。 やっべぇ・・・撃つ前であったならば飛び退いて回避できたであろう。撃ったものが狙撃砲ではなく銃であっても回避できたであろう。誤差を無視して速射していればまた回避できたであろう。そして確実な二つの事実。僅かな時間を使って照準を合わせたという事実。撃ったのは反動の強い狙撃砲である事実。
これが身構える暇を与えず、一撃を受ける結果をもたらした。頭蓋に衝撃が走った。窪んだ地面と爪の間に頭が挟まれている。 う…っっぷ三半規管に強い衝撃を受け視界が揺らぎ内臓が裏返るような感覚を覚え、嘔吐。揺らいだ視界に映る牙。 嗚呼、戦いの象徴に相応しい美しい牙だ。 牙・・・?牙!一寸落ちかけた意識が冴え渡る。 『香車翼刃!』白亜の獣の胸の中。刃で出来た翼が地を削り腹を抉る。パキパキパキ地と刃の欠片が舞う。だが、恐らくはストーンカの神官による祈りの年月に比例して石材は更に硬度を増していたのであろう。石で出来た獣の欠片は含まれていない。
近接装備を増やせば良かったと後悔の念が襲う。そして覚悟を決めた。己の義肢を、己の牙を、己の耐久性を信じた。―折れない。決して。 俺は、頑丈だぜ?義眼が青から赤へと戻り、挑発混じりに赤い眼差しを送った。 来いよ、受けてやる。尚、挑発するこの男、先程の頭への一撃でヅラがズレているので何かこう・・・台無しである。
「おやおや♪凄まじい衝撃波でしたね♪それに武器も失ってしまいました♪」瓦礫から身を起こし自身の損傷を省みる。特に問題は無かった。懐中時計を開き確認、あと少し時間が要る。同志ジュリア.の秘儀が炸裂し化身獣が半人半機のヴォルフと対峙。巨獣の連撃にも折れず、砕けず、受け止め耐えている。正直、目の前の二人が羨ましい、吹けば飛ぶ様なこの身体、明らかに肉弾戦には向いていない。重い鎧兜を身にまとい騎馬で戦場を駆け抜け豪槍を振るう、そんな戦闘ができたならどんなに爽快だろうか。詮無き事だと知りながら無いものねだりを繰り返してきた日々、たとえ一時でもと考え思いついた最終手段・・・。
やがて時計の針が重なり魔力充填完了の刻を告げる。「そろそろ決着の時ですね♪老師、お許しください、オウガデスは禁を破ります。なんちゃって♪」隠し武器連続発動。『滋養強壮剤レヴェループ』、果てし無く不味い飲料水を飲み干し強力な筋力を得る。「ふふ♪レベルアップとはこういったものなのですね♪」速度も強化された霧化でヴォルフの背後を取り羽交い絞めにする。『懐中時剣チメオヴェア』発動、長針が長剣となり背後からオウガデスの心臓めがけて突き刺さり、ヴォルフごと串刺しに、短針は短剣となりヴォルフの右目、義眼に刺さる。「さあ、楽しい遊戯の時間は終わりました。共に参りましょう♪白獣の中へ♪」
ヴォルフともどもジャガーの口内へ飛び込み飲み込まれる。「どうぞ召し上がれ♪」そして巨獣の体内へと侵入したオウガデスは全魔力を開放し、ジャガーを魔力支配する。「ふふ♪いただきます♪」一瞬硬直したジャガーは大きく屈み強靭な四肢を駆使し、大地を蹴って跳び上がる。高く、高く、アークダイナソアをも越えて天空へと高く舞い上がった。たとえ一時でもと考え思いついた最終手段、それは自爆。『強制終了装置ガメオヴェア』、髑髏兵衛印の自爆スイッチを握りヴォルフに見せる。「このボタンを押せばどうなるものか?押せばわかります♪迷わず押します♪1.2.3.ポチッとな♪」
轟音と共に爆発四散するジャガー、中心部より発生した火球により上昇気流が巻き起こり赤い髑髏型のきのこ雲が天空に浮かぶ。アークダイナソアからは、きのこ雲から小さな二つの黒い物体が遠方へ飛んでいくのが見えたとか見えなかったとか・・・。オウガデス、自爆により遊戯終了。
応射が来た。こちらの意図にドンピシャリの軌道が『風読み』の触覚を貫いてくる。『歪曲衛星』の位置を予測斜線上に微調整、心臓への着弾まで半秒弱、14.5mm×114の弾丸による絶命の直線が、 ガギンッッッ宙空の鉄球に弾かれて屈折。完璧な反射角でマユキの大腿部へーー!(行った! これは防げん!!)壁が消えても、残った床がマユキの位置からヴォの姿を遮っていた。知覚外からの超高速跳弾狙撃。避けられるはずが!
親衛隊室入り口付近は熱波と急な開放で空気が入り乱れ、『風読み』の触覚が機能しにくくなっていた。狙撃の結果よりも早く、正門前の状況が把握できてしまった。オイィなんだあのでけえにゃんこは!超もふもふしt……しまった、ヴォ!!援護に送り出した石竜が次々とストーン・ジャガーに飛びかかっていくがサイズが違いすぎる。おまけにストーンカの呪力か、ラプトルの爪牙がまるで通っていない。こちらの術は材料を選ばないだけに、最適化の精度が違う!城門前で戦うことに完全特化している。俺が選べなかった美しい在り方。嘆賞するしかない。だがどうするこの状況。ピンチとチャンスが同時に出現していた。俺はーー
ぴこーん!☆それは刹那の閃き。智慧と経験がやにわに導く最適解。敵将たちと我々にある、差異。彼らは守護者なのだ。守護する……何をか?俺は、結果としてヴォルフを見捨てた。違う、これは信頼だ。全幅のアレだ。長年連れ添った例のやつだ。大丈夫。あいつがんじょうだし。他に取り得ないくらい心身共に頑丈だし大丈夫。ちょうど何か派手な爆発音がしたが知らぬわハハハ。そんなことで俺の気を引こうったってそうはいかないんだから。大丈夫だ、問題ない。というかもう見ない。知らなかったことにする。死ねば、死ねば、助かる。見殺しにすればこそ、救える。迷うな。今、相手の心臓に王手を刺す。
怒りに満ちていたジュリア.の心は、今や喜びと興奮に満ちていた。夢見さえしなかった力が唐突に我が身に満ちる狂喜。巨大であるということは。強大であるということは、こんなにも我が心を踊らせるものか。爪で押さえて牙で引き、前足の爪で引っかきむしり、深くくわえて噛み締める。在り余る力が獰猛さを、残忍さを、破壊への衝動を加速する。先程までの脅威、その赤い眼が危険な輝きを見せる。 無数の銃弾が我が身を打つ。 鋼鉄の腕が、刃が、意志が繰り返し我が牙に挑む。 前足で強く弾き、みずから飛びかかり、牙で大地に抑え込む。
我が前には無力! かつて太陽さえ呑み込んだこの "神の化身" の前には、凍鉄の牙さえかよわい小鳥の骨に過ぎないのだ!見よ、これがストオオォォンカ・パウワアアアァアァアア!!! その凍鉄の牙が、何をしても砕けない、何をしても千切れないことに、狂喜のジャガーは気づかない。 その時、眼前に"霧の魔"オウガデスが現れた―――。
ジュリア.は夜空を飛んでいた。仰向けに、星々の海を眺めながら。星空に虚空が目立ち初めて三月、世界は混沌を極めつつあるという。亡国が、目醒めぬ眠りに就いた者達、死者達までもが甦り、世界に新旧入り乱れた活気をもたらしているともいう。ストーンカ城の居室から呪竜狩りに出る朝、毎晩手入れをしているはずの鎧にうっすらと埃が積もっていた。毎日通ってきたはずのデヌス寺院エリアには見知らぬ古い廃屋が目立った。名も無き防衛兵になる程の騎士の顔にも見覚えがなかった。ヴォルフ=ゾルダート卿が国を興したということも知らなかった。私は、何をしていたのだ?
先程の、同志オウガデスのあの眼差し。たしなめるような、憐れむような、励ますような、別れを告げるような、あの眼差しは、私に何を。いったい何を。――あぁそうだ。同志オウガデスは、私を助けてくれたんだ。私はすっかり秘儀に呑まれて、あの邪悪な術が私の魂を削るという事実も、まったく忘れていたんだ。それに、何のための戦いかも見極めないまま、力に任せ、護るべきものさえ見失って。"化け物"は、私の内にいた。
皆にあわせる顔がない。かつて、ヘルハンプール公国の名の下にともに語り合い、戦い抜いた同志たち。私が、きっと、目醒めぬ眠りに就いていた時、ヘルハンプールを護ってくれていた同志マユキ、同志こもも、他にも、他にも。涙が星となって天へと昇る。いつも優しかった祖父の笑顔が思い浮かんだ時、肩にたなびくものがあった。
ヴォルフ=ゾルダート卿のコート。爆発の時に引っかかったのだろう。紫煙、硝煙、草木の匂い、土の匂い。「(―――まぁ、気にすんな)」。そう言ってくれているような気がして、私はコートで涙を拭いた。これでどこまでも堕ちていける、そう感じた時、誰かが私の身体を受け止めた。「―――ありがとう、同志。 きっと来てくれると信じていた。 このままディスパテルへ。私はまだ、戦える」気がつけば、星空の虚空は新しく、懐かしく、個性を主張して力強く輝く星々で溢れていた。
「くっ」白いなにかが目の前を覆い視界を失う。これは多分目つぶしか。積み重ねた動揺は必殺の一撃へつながる。それこそが慢心だったことに気づく。彼らはその程度で折れるほど甘くはなかった。そしてこの状況は「ぐはっ」にぶい痛みが大腿部を襲う。これが狙いだったのか。立っていることすらできず崩れ落ちる。
何者かが近づいてくる音がする。視界はまだ失われたまま。貫かれた足は回避はおろか動くことすら許さない。そして敵は公国の英雄が二人。(絶体絶命の危機)だからこそ冷静に考える。前線に出ることはやはり間違っていたのか?否。そう仕向けられたのだ。すべてはあの挑発から始まっていたのだ。すべてあの人の手のひらで踊っていたのだ。
涙が落ちる。悔しさではなく誇らしさゆえに。偉大な師はやはり高い壁だった。そう感じさせてくれたために。近づいてきた相手を避ける方法は…ない。ドスッ体を貫かれる感覚がした。これで負け…なのか。守護されるべき私が墜ちれば負け。
ふと視界が回復した。私の手に光る指輪。共に国を守ってくれた人との思いで。ともに公国を支え…ともに去った人。だからこそ思う。私が墜ちてもヘルハンの負けではない。ヘルハンの歴史、遺志、そして民。私はそれらの守護者にすぎないのだから。だれかが残るだけで問題ないのだ。ならば今すべきことは…
賊の排除。だが瀕死に近い私に反撃する余力は…ある。たった一つではあるが。そう考えると同時に行動を起こす。私の中で抑えている魔力のストッパー。それを外すだけの簡単な作業。爆発にも似たなにかが発生した。城門塔が耐えきれず崩れたのだろう。自爆とはなんとも恰好が悪い。そう思いながら思う。「なんとも私らしい結末ですね。」宙に浮かびながら…自然と笑みがこぼれていた。(魔力暴走。体の全魔力を放出)
状況は圧倒的にこちらが有利だった。ほぼ移動を封じる必殺の弾丸。突き刺さる槍。これを勝利と言わずしてなんという。完璧過ぎる勝利ではないか。ではなんだ、何故俺の目は見えてない。衝撃が記憶の前後をすり替える。勝利を確信した直後の爆発。躱す間も、耐える余裕すらなくそれは迫り、俺の目を焼いた。目だけでは無い。顔も、手も、足も爆発の衝撃で。半瞬の静寂。五感を失ったがために訪れた己だけの静寂。その静寂で魂に囁きかけた。「俺の中に来い」と。
眼球の再構築。皮膚が鼓膜が神経が肉が焼かれる以前へと再構築され・・・・さらに。筋肉は醜く盛り上がり、ビクビクと血管がうねっている。そして足が異常に太い。そのせいで常人からみれば2回り程も大きい筈の上半身がやけに細く見える。アンバランスを具現化したように。そして最も特徴的なのはその右腕。まるで持っていた剣を腕が取り込んだように右肘から先が全て巨大な刃と化している。漢化。公国守護の怨念、醜い獣の体が唸る。爆発の衝撃を身に巻き込み、かき消すように剣を振り回し、尚も吠える。爆発の中心に止めを刺すために。
目の間の衝撃を受け止め、その巨大な足を床に突き立て、獣は右腕を振りかざす。が筋肉が急激に縮小していくその腕もその足も振り下ろす筈だった腕はみるみる細くなり、再び焼けた目が姿をあらわす。当たり前の話だった。漢化は剣無き民衆の剣、盾無き民衆の盾。公国を護りたいと願う人々の祈りの結晶。公国を護る「王」を斬る事はすなわち存在の否定。英霊の魂は依代から抜けていく。力を失い倒れる体、もはや数歩前に進む事も叶わぬ。爆発の衝撃は未だ残り、やがて塔ごと壊すのか。俺にはもう、それを抑える力はない。
「ジュア゛リ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛!!!!」叫ぶ。唇が裂け、喉が焼かれた声で。放り投げる。僅かに力が残った左腕で。何を?真後ろに、何時も仕込んである槍を。シュアリーとはいえ、槍一本のみでこの爆発は抑え切れない。槍で抑えてもらおうとは思ってない。これは俺からのメッセージだ。これ以上喋れぬ口で伝えなくても分かる、奴なら十分受け取ってくれる。「後はお前に任せた」この場を、この戦いを、この結末を。幾多の戦場で背を合わせたからこそともに血反吐と泥水をすすったからこそ。この状況で諦めることを、俺は奴に見せてない。
来いよ――抵抗を止め見据えた視線に、巨大な石獣は猛り、その爪を、その牙を、その衝撃を全身に浴びせてくる。都度激痛が走り、血と脂汗と逆流する胃液が飛散する。しかしコワレナイ。腕を、足を、片目を、翼を失くし、失意のなか古のエイクス、ドウム戦闘国家にて栄えたカガク技術を学び、機械義肢を作った。しかし燃料となる「燃える水」がどうしても入手できず。魔法詠唱、物理耐性と引き換えに己の魔力を義肢の稼働に注ぐべく、激痛に激痛を重ねて生身も弄り手に入れた身体。その副産物として100%生身と変わらない操作性と大幅に向上した物理耐性を手に入れた。
ドウムのカガク力は世界一ィィィィイイ!己の作りしモノが己の想定を超えた性能を発揮する。職人にとって至上の歓びである。しかしナニモデキナイ。否ナニモシナイ。石獣の猛攻を浴びるなか、半身半機の体内でカチャリカチャリと無機質な音が僅かに漏れる。再装填、完了。狂喜に溺れた石獣はその変化に気付いていない。好機。『全弾発s全身の銃口を石獣に向けたその時霧と共にオウガデスが現れた。瞬く間に背後を取られ―『懐中時剣チメオヴェア』背中に焼けるような痛みが走り、義眼から火花が飛ぶ。 この人は本当に、本当に、間を読むのが上手いなぁ…。
「さあ、楽しい遊戯の時間は終わりました。」 終わり?「共に参りましょう♪」 どこへ?「どうぞ召し上がれ♪」 へ?思考する速度よりも早く、石獣の口内へ飛びこまれる。 食われる。 ペトゥンで左足食われたとき以来かぁ。 詰んだ、かなぁコレ。ジャガーの体内、オウガデスの手元に何やらスイッチのようなモノが出現する。そして、自爆の衝撃を受け―――
ヘルハンプール王宮 あれ?またこんな所で寝落ちてたのか俺。 そうだ、ルネージュの不可侵と神威師団ニーズ・ヘグの攻守同盟漕ぎ付けた件をセーラーに報告しないと。 あ、鮪姫に呼び出された時間過ぎてる!やべぇ!拗ねられる!!飛び起きると同時に全身に激痛が走る。 痛っ。 …。 ……。 どれくらい、寝てた? 痛みで我に戻り、辛うじて原型を留める義肢を見て笑い、呟く。全裸で。 はは、アレだけの衝撃受けてまだ壊れてねぇよ。 ここは騎士の間?騎士の間を離れ、外務執務室へと駆けだす。全裸で。途中、爆発音が響くと同時に、マユキとヤヌスの気配が瞬時に膨らみ、そして消えた。
執務室の扉を開け、座りなれた机に向かうと、引き出しを一定の順序で開閉。全裸で。続いて壁石に手を置く。上、もうひとつ上、下、元の位置、右、元の位置・・・一つ一つ確認するように順番に手を置いていく。全裸で。ズズズ...壁が動き、隠し扉が現れる。扉を開け中に入ると防音加工が施された薄暗い室内、そこに無数の工具と義肢が並んでいた。ヒビの入った義肢を外し、真新しい義肢へと替える。全裸で。。その片隅に備えられたクロークルームへ立ち入り、服を着た。執務室を出て立ち止り、状況を整理。 多少狂ったが予定通りか。 さ、始めよう。中庭へ足を向けた。
懐から煙草を取り出し一服。暫しの時が流れ、ふと上空を見上げた。視線の先にあるのは南の城門塔。 公国の全てを以て敵をせん滅せよ。 おもしろいだろう? ぽつり呟くと、手元のルールブック?を見つめ破壊した。
アークダイナソアに向かって叫ぶ。 ライムさん― その悪事に特化した脳味噌で敵を苦しめてみろ。 サジたん― 誰よりも強かった公国への忠誠心を、その牙を俺に見せろ。続いて城門へ走る白狼に向かって叫ぶ。 ハッちゃん― カメラ持ってないで皆を護ってみせろ。 ルナ― 最後だ、公国側で俺に抗え。そして再び城門塔を見据え ドリさん― 実況してないで持てる知恵を絞って策の限りを尽くして見せろ。 持てる限りの罠で俺を捉えてみせろ。最後に何処とも無く叫んだ。 公国の民よ― セーラーの、俺の、皆の作った公国の力を敵に知らしめよ!そして――撃った。
『瞬殺光波』城門塔へ。『瞬殺光波』白狼へ。『瞬殺螺旋光波』アークダイナソアへ。とても無茶苦茶なこの男であるが、先程着替えた服からクリーニングのタグが風になびいていた。すごく残念である。
全く以って。お前たちは俺に期待し過ぎる。前線で何度同じことを伝えたかわからない。いつも言ってるだろ、俺は二流だと。人並み以上の期待をするなと。道具と策を巡らせて、無理を重ねてお前たちとようやっと渡り合っているんだ。見ろこの貧弱な身体を。細すぎるし軽すぎる。当たれば砕ける、吹けば飛ぶ。情けないほど矮小だ。嘆かわしいほど脆弱だ。ヤヌスなど特にそうだ。一度運良く引き分けかけたくらいで何を勘違いしてるんだ。見込み違いだ。偶然だ。俺が一番良くわかっているんだ。あんなものはただのまぐれだ。事故に近い奇跡だ。第一、あれはお前が守ってくれたんじゃないか。
今もそうだ。槍伝いの感触の有無がたまたま二人の反応を分けた。お前が勇ましく豪剣で圧した陰で、説明出来ない悪寒に俺は退いた。武器すら手放し仔猫もかくやの逃げっぷりだ。俺は恐ろしい。俺は怖いのだ。勇ましく戦ったことなど未だかつてない。刺せる相手を刺して来ただけだ。奇跡を呼び寄せたことなど一度たりともない。減点法で落とさなかっただけだ。分かりきった轍をその通りに歩んで来ただけだ。未知を思うと恐怖で震えが止まらぬ。命の賭けなど御免蒙る。死の危機なんてみたくもない。ロマンチシズムは俺と最も遠い概念だ。そんなものはあの丘の向こうに置いてきた。
師団長だの公国護剣だの祭り上げるのはやめてくれ。あんなものただのハッタリだ。欲しいものがあるからただそのために引き受けたのだ。生きるために仕方なく背負った職務事項にすぎんのだ。もう嫌だ。勘弁してくれ。金輪際これっきりだ。戦いなんぞ野蛮で大嫌いだ。俺は庭で花を愛でていたかっただけなんだ。いつだって踵を返して逃げ出したい、いっそコックにでもなっていれば良かったと思っているのにいつもいつもいつも、ああそうだよお前たちがそうやって「ジュア゛リ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛!!!!」俺を呼ぶから。「応」手に白い槍が収まった。『嘩捉』。……もう仕方ねえだろうが。
一歩目。ヤヌスの巨体の陰に入る。脚部に励起状態の魔力を全投入してのクレイジードライヴ。人外の一撃が魔力の解放と一部相殺した刹那を費やして、俺は黒い風を翼のように纏う。『夜のあらし』。二歩目。唸る負の魔風で暴走する魔力を減衰しながら再びの『嘩捉』。今回の俺には攻撃手段が一つしかない。槍一本担いでの愚直な突撃。その槍すら今は借り物だった。以前までの魔力集中を行うそれとは違い、『嘩捉U』は他部位の魔力を完全にカットする。防御を一枚でも突破されれば即瀕死の大ダメージ。意識の全ては相殺の被膜を調節することに捧げられた。
ヤヌスのおかげでほんの少しだけ薄くなった衝撃の波を掻き分けるように潜る。暴れる穂先を抑え込みながらの教本通りの一撃。必殺技など俺にはない。俺にそんな贅沢は望めなかった。思い描くのはただのイメージだった。神・突・撃。真似のしようもない、知り得る限りの最強近接技。極技の至には到底及ぶべくもなく。ただイメージを乗せて前を見る。行うのはただの突きだった。アンバランスな速度以外に何も持たない平突き。何も特異なもののない、教本通りの必須課程。誰もが知ってる通過儀礼。何の加点もなかろうが知ったことか。俺は減点法で満点をかっ攫う優等生なのだ。お手本通りにひと一人を貫殺してやる。
衝撃波との鍔競り合いに耐え切れず槍が折れた。バランスが崩れ、先行していた左腕が中破。知るか。血飛沫は溢れる先から蒸発していた。半身になり旋回してマユキの脇腹に突き刺さったままの黒槍を逆手に掴んだ。続行だ。「おオぉ――、」俺のかっこいい超大勝利までやめてやらん。「――おおおあああああああ!!!」勢いのままもつれ合って隊室の入口を突き破り、廊下を突き抜け一気に中庭の中空へ飛び出た。解放された衝撃波は微小点での相殺と高速移動で楕円に歪み、余波を城中に散らしながら空へ抜けた。見るも無残な有様だった城門と塔はかろうじて全壊を免れながらも、衝撃の余波と夜闇を割く光波を受け、倒壊した。
「既に刻限の19日を回りましたのでジャッジに入らせていただきます。オウガデス選手戦闘不能を確認!ヤヌス選手戦闘不能を確認!マユキ選手戦闘不能を確認!現在戦場に立っているのは…ジュリア選手!シュアリー選手!ヴォルフ選手!以上の3名です、が…シュアリー選手、ヴォルフ選手は、登録票に無い技使用により失 格となります。即刻戦闘行為を中止しなさ…」言葉尻は城門塔が崩れる轟音に飲み込まれた。
瓦礫の下から青い一つ目がにょろりと這い出す。にょろり、にょろり土埃を無数の触手で払い退け、下から女が出てくる。マイクを手にしたまま。すーーーっ。大きく息を吸い込んで大音声を吐き出した。「フェアプレイもここまでです。 すべての国民に要請します。 ヴォルフ、シュアリーの2名を止めるべし。 国賊に最早容赦は要らぬ。 手段も一切問いません!」<以降、どなたでも本スレに乱入OKです☆>
戦いは最終局面。なんとなくそんな気配を感じながら見失ったハルちゃを見つけようとあたりを見回していたら、土煙の中からなにかが飛んできた。それと同時に、ヴォル様の呼ぶ声が聞こえる。「最後だ、公国側で俺に抗え。」『側』。まるでどっちつかずでいたルナのことを知っていたような言い方で。そのうえで抗えという。むっと眉根を寄せる。ヴォル様の反対側になんて行ってあげない。ちょっとなんか言い返さなければ――
そこへ、一瞬忘れてたものが目に入った。意識を持っていかれてた間に随分近づいていた飛んでくるなにか。さらに近づいて、どんどん近づいて……そして。「。。。シュアリー様、マユキ様!?」ものすごい水音と水柱をあげて泉の中に落ちた。水面に座り込んだまま、水中を覗き込む。ヴォル様に文句は後回し!抱いていた愛猫と白狼を、水中で動けるように力で包んで急いでおふたりの後を追う。水の中に潜る直前、崩れた城門から光が向かってきたのが見えた。
ルナちゃんの姿を見つけて中庭に向うその時、風を引き裂くような声が響く。聞き覚えのありすぎる声は挑発するように鼓膜を揺さぶる。「…ヴォ、さ?…な…きゃああぁっ」突然近づく魔法の気配は乗る白狼へと向かい、魔力防御は力及ばずギャンと大きく鳴いて足元から黒くこげて消えて行く。「きゃああ!白狼さ…あ―!」冥土服の裾を焦がして来る炎を避けるように飛び上がる。地面に激突までは行かず何とか降り立とうとして信じられない姿を見つけた。城を突き破る衝撃波と轟音と血の匂いと…「…シュア…たん?まーさん!?」そしてルナちゃんのいる泉へと転落していく。
日常と笑顔が血と魔気に変わり、信じられないものが目の前を霧散せんばかりに飛び散り壊れる。肉眼に俄かに信じられない光景。水柱を上げて二人が水に沈む。その後ろに見える人影に叫ぶ。「…ルナちゃん!ルナちゃん!逃げてのな!!」力の限り叫ぶと右手を大きくかざし、集まる光がやがてホウキに変わる。魔力媒体、ハルエリエ専用ホウキ。使うことの無かった力が湧き上がる。今使わなくて何時使うのか、誰かを守るための力を。大きくホウキを振り上げたその時、解説をしていたドリさんの声が高くが響く。耳を疑い意味不明だと笑いたい。けれど無視できないほどの惨状と現実が目の前にある。
「なん、ですのな?ヴォルフさとシュアリーさを…止める?」見開かれた目に更なる光が映った。主人の乗ったはずのダイナソアから放たれた『滅死咆哮』が地上を目指す瞬間、サージが黒い矢のように真っ直ぐに向う姿が見えた。なんで、どうして、これは夢?両羽根を広げホウキを振りかざす。瞬間、巨大な防御壁が中庭と城の届く範囲までを覆い、更なる倒壊だけは防いだ。これは、これは夢?笑い合う仲間、時には喧嘩もして、だけど思いは一つ。それはなんて事無いもの。ヘルハンプールを愛しているって気持ち。壊れる?壊す?「そんな事は許さないのなー!!!」
瞬きする間もなく『瞬殺螺旋光波』がアークダイナソアに直撃するが、僅かにその身を焦がすだけだった。「ふはは、この竜を誰の竜だと思っているのか!『瞬殺螺旋光波』など、俺には効いてもアークダイナソアには効かぬわ!」おいっす!他人のフンドシで相撲をとることに躊躇いなどない悪農民のライムだ。「やれ、アークダイナソア、俺の為に身を粉にして戦うのだ。」巨竜がブレスの構えをとる。ブオオオオオオオオオオォー大気を震わせ放たれる衝撃波のドラゴンブレス『滅死咆哮』がヴォルフを襲う。
攻撃を紙一重ですり抜け、翼を最小限に縮めアークダイナソアを蹴る。弾丸の速さで黒い矢と化したサージは地上のヴォルフ目掛けて一直線に落下していく。口元から光を放つエノクが流れ、脇に刺した野太刀に魔力が籠もる。背で『瞬殺螺旋光波』が弾け、次にブレスの気配。サージは構わず速度を上げ、銀色の隻眼に向かってけたたましい雷鳴を轟かせながら野太刀を抜いた。「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオルフーーーーーッ!!!」大振りな分、避けられたら次がキツイ。予備動作も丸見えだ。中庭のヴォルフに雷を纏った野太刀が迫る。――瞬間『滅死咆哮』が地上を撃った。
北の主棟、右手『騎士の間』。灯りのほとんどが落とされた大ホールの片隅に、二つの人影があった。横たわっているのは、体にいくつかの貫通創を抱え、意識のない状態のマユキ。傷には応急処理だけが施されていた。そして座り込んで柱に背を預けているのが俺。水を吸ってしまった軍服の上着を脱ぎ、袖のないアンダーウェアだけの姿になっていた。左肘から先に、軽くはない火傷と裂傷。右手と口を使って包帯を巻き、縛っている。肘から上には宝珠と魔石をあしらった銀の腕輪が嵌っている。腕輪の魔力が上腕部の負傷を防いでいた。「シュアリーさま」ホールの奥手、称号室に繋がる通路への入り口に、三つの新しい影。
ルナリアと、その足元で美しい猫が体をぶるぶると震わせ、熱心に水を弾こうとしている。その前でSergentの白狼が警戒姿勢。「ちゃお」……あの人たちみたいな呼び方するから、時々どきっとするんだよな。ルナリアは白狼に手を添えながら、「もしかしてここにつながってること知ってて、わざと落ちた……?」「いやあ。運が良かったね」半分は。腕の応急処置は終わった。痛みよりも燃えるような痺れが強い。指先の感覚が薄い。俺はその姿勢のまま問いかけた。まだ立てない。案の定に動悸息切れ、軽いめまいがしていた。
「状況は、だいたい分かってる。アレだな、困るな、どうして君のような美少女が、敵側の前線に出てくるのか、って、ああ、有無を言わせず襲ったのは俺らだったな」時間を稼ぎながらだらだらと続けていくと、彼女がむっとした表情になった。あれ。「ヴォルさまもシュアリーさまも、ルナのこと、勝手にどっち側とか決めないで」……ほー。「じゃあこっちくる?」彼女はむーっとした表情になって、「まだわかんないけど、そういうのはルナが自分できめる、にゃ」……ほうほう。ほうほうほうほう。「素晴らしい。贅沢な子だ。」ゆっくりと立ち上がる。うし、行けるな。
「キュートなお姫様におぢさんいいものを見せたくなったぜ。ヘイでかワンコ、あるじの君主だ、丁重に運べ」マユキの身体を抱えて押し付ける。反発しながらもマユキを気遣って白狼は避けられない。そしてこちらも召喚。白狼と同サイズの黒虎が現れる。黒虎はルナリアの前に屈みながら、「にゃーって鳴いたほうがいいのかしら」「しゃべった……!」「はいはい乗った乗った」ルナリアを抱え上げて虎の背に乗せ、俺もその後ろに跨る。「よし。国王と美少女いざ誘拐」
二人と一匹を乗せた黒虎が駆け出し、王を乗せた白狼が戸惑いながらもその後を追う。白狼にとって、自らと黒虎の両方の上に人質を抱えている状態。どちらも見捨てることができぬためについていくしかない。手負いの人間一匹と侮っているうちに、戦うことすらできぬまま一手で詰まされていた。走りながら、気付く。『おれの知性を織り込み済みでハメられた』。屈辱と、畏怖。「シュアリーさま、どこにいくのっ? てゆか何するのっ?」「ヴォとぬっさんと俺とは、大枠では同じ方を見ているが、実はそれぞれ目的が微妙に違う。俺が今回最初にしたかったことは」それはだね。「調べ物です」行くか。東、図書館棟へ。
すっきりと目が醒めた。自分がアイスコフィンの刀身か、氷長石(アデュラリア)にでもなったかのように、冷たく冴え渡った、澄み切った、凛とした目醒め。今日も素晴らしい一日が始まる。期待を胸に眼を開けると、眼の前に広がるのは霧深いルイース高原の早朝の空、ではなく星降るような大銀河。視界の隅を何かが走る。耳を澄ます、までもなく聞こえて来たのは……誰かの高笑い、そして喧騒。続いて空気が震え、同志ライムの声。「『瞬殺螺旋光波』など、俺には効いてもアークダイナソアには効かぬわ!」。 事態を飲み込み、跳ね起きる。
―――が。いやに身体が軽い。そして、治療をしてくれていたのであろう冥土たちがやけに優しい、それにデカい。オーガ冥土か?冥土の一人が話しかけてくる。―――ここは安全よ、おばあちゃん。………………………おばあちゃん?ジュリア.は、(おおよそ6年ぶりに)老婆に転生していた。「…ヒャッハァー!! いつぞや以来の、化石ババの大復活ぢゃあーっ!!」かつて、気力を使い果たし死の危機に直面したジュリア.は、時の開発大臣ユーリから「生命開発/老婆転生」を施された。
今、ジャガーの秘術に魂を削られたジュリア.の体内でこれが再発動、御歳二百歳 "グランド・マザー" 寿理婆が華麗に再誕したのである。少女のように小さな身体を腰を曲げ背を丸めてさらに小さくし、顔には松の樹皮のような深いしわをたたえているが、眼には不気味な生命力をみなぎらせている。渋い呉服に合わせているのは毛皮の外掛け(ジャガー柄)、白髪は束ねて団子にまとめ、牙の意匠のかんざしが深く差し込まれている。煮えたぎる気合、炸裂する闘志。そのレベル、実に200。王都の夜風が呉服の裾を静かになびかせる。
寿理婆は背中の埃を冥土に払ってもらい、丁寧にお礼を言うと―――風よりも速く飛竜に跳び乗った。「ゆくぞ飛竜! 竜戦姫の如く、ゼフィル御大の精鋭の如くぢゃあ!」。飛竜は天高く舞い上がると、ディスパテル上空を旋回する。「飛べ! 飛べェ! ライフィードより熱く! ライゼルより激しく! リッキー(・エオル)より繊細にィイイイイ―――!!!」歓喜の老婆を流れ弾のような何かがかすめた。水を差された老婆は冷静な視線を中庭にやると飛竜に命じてディスパテルの外側まで降下、東棟二階の小窓に跳び移り、音もなく窓を破り、這入り込んだ。
中庭の騒乱からは切り離され、静謐が支配する星明りの回廊。囁くような足音を石畳にしみ込ませつつ、図書館棟を目指し進むシュアリー。黒虎がゆっくりと足を止め、白狼がそれにならった時、石柱の陰、暗闇の中から老婆が姿を現した。「…そなたの眼には決意が見える。 無下に手折るは気が引ける。 ぢゃがの、このババもただで通したとあっては 若人どもに示しがつかん―――そこでぢゃ」老婆はシュアリーの傍らに立つ黒い虎に視線を送り、続けた。「…ほれ、そこな黒い虎、 あるじのために、時間稼ぎをしてはみんかの?」老婆は既に、夜霧も凍る程の殺気を放っている。
自宅で優雅に惰眠を貪っていると、再三にわたり地響きが。少し苛々しつつ寝返りをうっているとジュリア.嬢から原因を知らされた。安眠妨害をしているのは貴様か、ヴぉ……!!殴る!全力で殴る!!窓枠を蹴り勢い良く飛び出すと、普段は絶対に出す事のない背中の翼を広げた。同時に尻尾も出る為、人前では決して開くことのなかった羽を。少しぎこちなく羽ばたき、それでも目標めがけて飛び立つ。目指すは安眠妨害。「貴様そこへなおれ!!!」立ち込める煙を切り裂き、上空からヴォルフの頭上めがけて振り下ろされる手刀。技名:脳天チョップ(渾身)
(各者、現状はこうだ!ヴォ 現状:凍牙チーム。全「公国」民へ宣戦布告。 現在地:中庭ジュリ婆 現状:ヘルハンチーム。黒虎と戦闘開始。 現在地:北棟〜東棟の回廊。シュアリー 現状:凍牙チーム。 現在地:中庭の泉から地下水路を抜けて北棟へ→ルナリアと戦闘不能状態(気絶)のマユキを連れて東棟へ移動中、回廊にてジュリ婆と接触。ルナリア 現状:シュアリーの後を追い、同行。 現在地:同上。ハルエリエ 現状:ヘルハンチーム。 現在地:中庭、泉周辺。Sergent 現状:ヘルハンチーム。 現在地:空中→ヴォルフへ降下)
(中庭:ヴォ、Sageたん、ライムさ(withデス師匠の魔眼)、ハルちゃん、いんたん城門塔:どりりん、ぬっさん(生き埋め)北棟(王宮)〜東棟(図書館棟):シュア、まゆっきー、ルナちゃ、ジュリアたんこんな感じだ! 多分! 間違ってたら訂正プリーズ!)
(回廊 北棟 回廊西棟 中庭(泉) 東棟回廊 左塔・正門・右塔 回廊)
縛りが無いってホント、イイネ。『滅死咆哮』が迫るなか、ゆっくりと真新しい両の義手を前方へ突き出す。ヴヴヴ・・・細かく震え始めィィィィィ・・・・ーーーーーー―――超振動で共鳴が起こる。小石が宙に舞い上がり、粉々に砕け散る。 所詮竜の咆哮、空気の振動。相殺すればいい。バシュッ衝撃波は振動によって掻き消されようとした瞬間だった。 「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオルフーーーーーッ!!!」白銀の髪の男が割って入り、野太刀を振り下ろす。
寸前のところで両腕を交差し防いだが ・・・ッ!!雷撃を受け火花を散らし、動きを止められてしまう。と、間髪入れずに 「貴様そこへなおれ!!!」羊柄のパジャマを着、寝癖をこさえた魔族がこれもまた頭上に手刀を振り下ろした。 タバ・・っ☆★☆!!?地面が窪む程の衝撃を受けた頭は、先にベヒモスから蹴落とされた際負ったたんこぶの上に更に大きなたんこぶを作り上げた。
さて、痛い。激しく痛い。カツラが不安定だ。落ちつかない。しかし・・・面白い。目の前にはサージとインタバル。上空にはアークダイナソアを駆るライム。どう捌く?どっちから・・・いあ、俺はそんな性格じゃないだろ。 『全弾発射』!!窪んだ地面の中、コブの痛みで頭を抱えた手を退くと両手両足を広げ、四肢から開かれた無数の銃口から無数の砲弾が四方と上空へ一斉に放たれた。
勢いのままに、アークダイナソアへ飛ぶ。 至近距離で撃ったけどあの二人には軽い足止め程度だろうなぁ 追って来る前にこっちを先に・・・出来たらいいな。さて。アークダイナソアの頭上、ライムの眼前に立ち、小瓶を取りだし一気に飲み干す。 ライムさんにまっとうな攻撃は効かないのは知ってますが、コレなら如何?素早く風上に移動すると腰を深く落として力を込める。ぶぼっ黄色い”もや”が辺り一面を覆い尽くす。この男、屁ぇ扱きやがった。
鼻を摘んで高らかに笑う。 フガハハハハ、戦闘において嗅覚を攻撃された経験は少ないだろう!!! うっわ、目に染みる!?やべぇ。ふがはははh涙目になりながらも笑い続けた。
「調べもの?」走る黒虎の背の上で、後ろのシュアリー様に聞き返す。外はすっかり夜になっていた。公国図書館。地下書庫にはヘルハンプールジャーナルの記録物等も置いてあり未だに増え続けている。と、いうか増やしてるのはルナだけれど。そのものはなくなったけど、へるじゃはルナがいる限り残ってる。個人的な旅の記録なども国外の記録として残してあるし。資料を頼まれればいつもここから持ち出している。こんな怪我しながら来なくても普通に来たらいいのに。ちょっと呆れながら、お二方にそろそろと癒しの力を飛ばす。なんとなく控えめに、何気なく。水の力で傷の穢れを払いながら。
黒虎がゆっくりと止まった。ちょっと遅れて、後ろから聞こえてたかしっかしっという音。。。。白狼の爪音も止まる。みんな避難したあとの、静かな回廊。立ち止まるとその静寂が急に襲ってきた。どうしたの、とは聞かない。ただ黒虎の緊張をほぐしたくて、毛を撫でる。頭を撫でると、耳がぴくぴく動いた。でもそうだね。あなたには反対側の人が来たね。石柱の陰から姿を現したのは、公国の守護者。その殺気にあてられて、愛猫のメイフィが毛を逆立てた。上弦の月。星明りを殺さない、でも明るさを保った夜。優しい光に照らされて、みんなの目が光って見えた。
北棟2階に上り、石畳の回廊を通って東棟2階へ。獣2頭の足は静かで速く、案外これなら、と思いかけた矢先の遭遇だった。石柱の陰、姿を見せる前から背筋に戦慄が走る。なんだこの練度は。何者か、気配がまったく記憶にないが、……親衛隊、それも筆頭クラス以上――!この状態で近接戦闘は無謀だ。出会い頭に一撃で墜とすしかない――普段であればできたその判断が、『励起』の負荷に引きずられて遅れる。
気付けば2頭の足は止まっていた。まずい。ペースを握られた。即座に虎上から飛び降りて初撃に備える。イニシアチブを奪い返す一手は……だが事態は、「…ほれ、そこな黒い虎、 あるじのために、時間稼ぎをしてはみんかの?」予想外に転がっていく。いかん、このパターンは。黒虎は既に腰を落とし、ルナリアに降りるよう視線を向けていた。そうなるよな。言っても聞かんだろう、こうなるとここは任せるしかない。であれば。
俺は老婆に向かって応える。「御身がどなたかは存じ上げぬが、話が早くてありがたい」ルナリアと猫が黒虎から降り、白狼に乗り換える。「ただしご老媼、お気をつけて。これは見るだけなら可愛いが」黒虎が躯体を縮ませ、姿を変え、「少し噛み癖が強くてね」凍牙の黒い軍服を身にまとった長身の女が現れた。クセのついた黒髪、金の瞳。左耳にピアスの赤い石が輝いている。彼女は老婆に視線を向け、「……坊や、これだけじゃ足りないわ」耳の宝珠では不足と俺に強請る。俺は腕輪から魔石を二つ、銀環付きで抜き取って彼女に投げる。「返せよ」
黒虎だった女は指輪二つを嵌め、試し振りで右手を壁に叩きつける。轟音。石壁が弾け飛んだ。「――あは。こういうのを待ってた」舌舐めずりの上で、獣の瞳孔が笑う。*黒虎(キィエ)・人間態。レベル168相当。タイプ:前衛・高速重打・格闘型特記事項:蹴り、投げ、関節技使い。好戦。無痛覚。
ヴォルフの四肢からの一斉射。当然全部が全部避けきれる訳もない、いくつかは被弾するも運良く致命傷にならず。――本当に運が良い事。我ながら呆れた。だが、左肩と右大腿部、左目の脇に弾が半分削っていくように被弾。痛みは…実はあまり無い。これのせいで戦場では多少の傷では怯まないクセがつき、自分でも用心しなくては…と言う弱点だ。良くも有り悪くもある。目の脇の傷からはドッと血液が流れ出て目に入るが、元々見えていない目だ。そんなに差し障りはない。
さて、その一斉射の主はとっととアークダイナソアへと飛んで行った。ふう…と一つため息をついて見上げる。――上と下が逆転したか。追うとなると不利だな。横に居る羊柄の寝間着のお方へ向き直り、一礼。「渾身の手刀、見事でした」無論、本心。目の前のこの方も憧れの人物の一人だ。そして再び礼。「それでは、失礼致します」サージは音もなく風のように地表を低い姿勢で駆けて行く。
左手の手袋を投げ捨てた。一つ目のリミッター解除。ひび割れた手指が露になる。まるで土くれの人形の壊れた手のように。その手の甲には異形の魔方陣が描かれていた。音もなく西塔の入り口へ。白狼の気配は東塔へと近づいているのは分かっている。そちら方面へジュリア.さんの気配が降下したのも把握。いや、白狼が少しばかり遅れて報告してきた。だから敢えて反対塔へ。最上階まで駆け上がると多少息が乱れたものの、思った通りアークダイナソアを上に見、その影となっている。ヴォルフからは死角になっているはず。気配読まれてれば終わりだが。一番大きな窓をそっと開け放った。
誰も居ない城内に這いつくばる様な弱々しい風が傾れ込む。「よい」呟くと同時、窓枠を蹴ってダイナソアの下へと滑り込むように飛んだ。上と下の戦いの場合、圧倒的に不利なのは下だ。だから死角を突くしかあるまい。さて、それは上手く行くのか…。最初とは違うエノク語が小さな光を放ち口から漏れる。それは白い炎のような冷気を纏っていた。左手が掴む先ほどの野太刀とは別のもう一本の太刀へと力が溜まっていく。 ヴォルフまであと10メートル。
自分の放屁で咽ながら高笑いをしている。ここはダイナソアの下だから効果は半減してはいるが…少々目に染みた。元々見えてないから良いが…大胆な事をやってくれる、そこにシビr…は置いといて。彼が高笑いをしている隙と、ライムさんに気を向けてる内に上手く背後を取りたいな…と思案し…。 ヴォルフまであと5メートル。
利用された事に少しは不満がない訳ではない。まあそれは所詮自分は獣であるから仕方がない事であろうと思う。しかし、一つだけ我が主の事で彼が思い違いをしてる事が少しばかり気になった。それもきっと我が主であるならば気にせぬ所であろうが。さて。この背にした領主マユキどの。応急処置にて辛うじて虫の息だが生きてると言う所か。それを我が主に報告すると、ため息だけが返って来た。仕方あるまい。今。我々の目の前には公国の守護者たる女傑がおる。よい流れだ。
ルナリアどのはきっとシュアリーどのの人質とはいえ、危害は加えられぬ事であろ。ならば我の役目はないも同然。やる事はたった一つよ。ルナリアどのにそっと降りるように意思表示する。ん?と、不思議そうな表情をし彼女は素直に従ってくれた。すると…ぬるり、と白狼が溶けた。まるで雪が命を持って蠢く様な。うぞうぞと白い物体が置き上がる。それに気付いているのは今のところ…ルナリアどのだけ。
瞬く間にそこには可憐な氷と雪で出来たような少女がマユキに覆いかぶさる姿があった。「コれ、マユキどの。目ヲ醒まサネば、きット死ヌ瞬間まデ後悔すルぞえ」そして彼に口づけた。――ちううううううぅぅぅぅ…。一見吸っているようだが…少女は急速に色を失くしていく。引き換えにマユキの体の傷の半分が回復する。彼女が消え失せようとした時マユキが微かに動いた…。
水柱の向こうでは何かが起こっている。目を凝らすとそこにはもう誰の姿も無く、ただ静かな空間。「…ルナちゃん?ルナちゃん!どこのな!」探す視界に入ったのは、ヴォさへと切りかかる主人サージと、それをいなしたヴォさの頭に羊ちゃんのパジャマ姿のインタバルさんが華麗にチョップをかましているところだった。……………(がく)久しぶりに膝を折る。地べたにペタンと座ると、こげたスカートの裾がぼろぼろと落ちてしまう。…男(?)の戦いに割って張ってはいけないことをハルは悟った。『守って見せろ』そうヴォさは言った。なら、ハルはやれることをしよう。
立ち上がると冥土服のスカートがボロボロと落ちるが気にしない。羽を広げると見上げたのは西の兵士塔。ホウキを掴むと一直線に舞い上がる。「確か、あそこの軍務室には魔方陣の古書があったはずなのな!」ヘルハンプールの民を守ると決め、ハルは戦いとは逆の方向へと飛んでいく。背後で凄い「ぶぼ」と言う音と、なんかヘンな匂いがした気がしたがとりあえず飛んでいくのである。
先ほどつけたレスにて「塔」と「棟」の書き間違いをしてしまいました。正確には「西棟」でした…;すみません。
いろんなところからいろんなおとがしてきますわかりますよ地面を通じてつたわってきますてゆか……あのね。ワタクシ瓦礫に下半身埋まったままなんですけど。
渾身の手刀が決まった相手は頭を抱えて苦しんだと見るや、全身から一斉射撃。至近距離の射撃など身をかわして間に合うものではない。とっさに開いた翼で身体を包み、直撃だけは避けたが全身傷だらけになる。砲撃が止み、見るとヴォルフはもう目前に居なかった。Sargent殿が礼儀正しくお辞儀をするのが見えたが……満身創痍ではないか。止める間もなく駆け去っていく姿を見送り、ふと我に返る。(一瞬聞き覚えのある声で「のなー」と聴こえた気もした)……こんな化け物の相手をしている場合ではない。それよりDolly嬢を助けに行かねば。
倒壊した建物の下敷きになっているはず。左の塔だと言っていたな……ここ、中庭からだと少し右か。大きく翼を広げると、おそらく塔だったと思われる瓦礫の山に向かう。飛び方の勘も取り戻してきたようだ。目的の場所に到着すると、果たして瓦礫の下からは見覚えのある紫色の触手がゆらゆら伸びていた。上半身は自力で抜け出したものの、そこから動けないらしい。「……大丈夫か?」瓦礫の中から小柄な彼女を苦もなく引きずり出すと、両腕に抱えて飛び立った。酔っ払い?いいえ見かけませんでした。
ようやく救助隊キタ――(゜∀゜)――!!LV152の屈強アームに抱かれて、軽々と持ち上げられる。「……大丈夫か?」あらっ、これって初めての乙女チック展開じゃないの!?柄にもなく頬を赤らめるドリー…「だ… 大丈夫じゃないよーっ!紳士のパジャマのお尻のとこ 破けて中身が出てるっすーーーー。゜(゜´Д`゜)゜。」翼を出した拍子に飛び出した矢印みたいな魔族のシッポがズボンを突き破り、縫い目はどんどん裂けていく。やばい。やばすぎる。インタバルの尻を触手で必死に押さえるドリー。事情を知らん人々にはそれはそれは仲睦まじく見えたそうな…
「…ほほぅ。虎が人に化けたか、それとも人が虎に化けておったかの」シュアリーらには眼もくれず、寿理婆は雷鳴のような声を上げた。「カマン! ババがこたつで可愛がって進ぜよう!! ……敷き物としてぢゃがァァ!!」 言うが早いか、二つの影は暗闇の中で激突した。ぶつかっては離れ、離れてはまたぶつかる。衝突を数度繰り返した後、今度はぐっと近寄っての打撃戦が火花を散らす。激しく打ち合い、蹴り合う中で、二人の間に一定の距離が生まれた。キィエが進めば寿理婆は退く、キィエが下がれば寿理婆が詰める。老婆はキィエの手足がぎりぎり届く距離を保っている。
ある時、唸りを上げるキィエの拳が老婆をとらえた。しかし老婆は両足の裏で拳を受け止め後方に跳躍し、音もなく着地した。身を屈めたまま、老婆は静かに語りかける。「おぬしの生まれは虎と見た。 手の甲を体の内から外へ放つ動きは苦手ぢゃな? 下がりながら攻めるのも得意ではないようぢゃ。 …これは老婆心ぢゃが、その姿ではババには勝てんぞ」老婆の右手には "嘆きの爪" が装着されている。「これはの、そなたのあるじの義姉(あね)君がよくした武器ぢゃ。 黒き虎の娘、そなたはこの爪に……何色の涙を流すのかのォ!!」
キィエの猛攻が始まった。さらに速さと威力を増した手足の連続攻撃、寿理婆を掴んで関節技に持ち込まんとする指先が嵐となって迫り来る。しかし、寿理婆は蹴撃を避け、あるいは手のひらで受け流しつつ体の向きを変え、掴みかかる手には嘆爪の一撃を合わせ反撃する。老婆の人間離れした運動能力はキィエの蹴りの、突きの勢いを空中における自らの推進力に変えてさえいる。数千度の闘いを経て人型の動きを知り尽くしている老婆には常に、自分にとって安全な間合いが見えている。老婆は、反撃のチャンスをうかがっている。
キィエの速さがさらに上がる。感情の高ぶりは攻撃の精度を落とさないばかりか、逆にキィエの集中力を高めている。絶え間なく繰り出される必殺の一撃を紙一重で回避しながら、老婆は問う。 …ときに虎の娘。そなたはなにゆえ、 人の姿で闘うことを選んだのぢゃ?キィエの打撃に嘆爪を合わせる頻度が上がる。 このババとの闘いは そなたのあるじが目的を達するための時間稼ぎ、 そうぢゃったの? その闘いに臨み、 そなたは最大の武器たる爪と牙を捨ててまで、 闘いの役にはたたぬその美しい黒髪を負ってまで、 あるじの眼の前で人の姿を選んだのぢゃ
ラ・デルフェス。老婆は長い言葉を紡ぎながらもキィエの懐に飛び込むと光速の掌底と爪、蹴りの五連撃をあばらに撃ち込んだ。 あるじから借り受けたその指環の力で あるじの敵を打ちのめしたかったんぢゃろう? そなたのあるじは、 そなたにとってただのあるじではないのぢゃなキィエが老婆との闘いに集中すればするほど、老婆の言葉が研ぎ澄まされた意識の中に這入り込んでくる。 そなたには、 あるじに寄せる特別な想いがあるようぢゃ そなたにも分かっているのぢゃろう? そなたにとって、シュアリー殿は特別な存在なのぢゃ
老婆を壁際へ、石柱へ追い詰め強打を放つときわどく回避され壁や石柱が破裂するように視界を遮る。老婆の殺気は、殺気どころか気配さえいつの間にか消えている。無意識に聴覚で敵の位置を把握しようとすればさらに老婆の言葉が聞こえてしまう。 シュアリー! シュアリー! シュアリー! そう呼び掛けてみたくはないかの そなたの、その美しい金の瞳で シュアリー殿の眼を見つめ 素直にその想いを伝えてみたくはないかの石埃の中から強烈な一撃。老婆の手刀がキィエの鎖骨を砕く。徐々に湧き上がる敗北への恐怖。 抱きしめてもらいたくはないかの
槍と嵐の戦いではなく、 シュアリー殿の心の苦しみを分かち合い 共に打ち勝つための戦列に加わりたくはないかの地獄頭突き。ダメージを蓄積してきたキィエのあばらに老婆渾身の一撃が炸裂し、折れたあばらが肺に突き刺さる。キィエが掴んだジャガーの毛皮は、老婆からするりと滑り落ちた。手足の骨は嘆爪の傷と強打の衝撃で砕ける寸前にある。 シュアリー殿がそなたを喚ばないときにも、 そなたを必要としていることがあるかもしれんの そなたの心に、明るさとあたたかさをくれる太陽は ―――誰かの?闘いは、もはや一方的な展開になっていた。
「なんで、城門に、でっかい穴が開いてるんでしょう、か?」あまりに疑問だったのでつい言葉が口から出てしまう故郷のガレーナを経由して最後の時を過ごそうとヘルハンプールにやってきたいくつかの国では呪竜が城壁を囲んでいるという話だがヘルハンには出ていないはず…なのに…
「なんで、こんなにいろいろ壊れているのでしょう…?」そういえば、さっきから爆音とかしてた気がしなくもないけれど気にしても仕方ない「まぁ、とりあえず、マユッキーに挨拶しにいっとかないとねー」現国王に挨拶をしに行くため瓦礫が散乱する王城へ続く道を進んでいくのであった
負けた。痛みはない。耐えることではなく、使い潰さないことに気をつけながらというのは、未だに不思議な感覚だった。……今度のは、上手く出来ていると思ったんだけれど。へたり込み、冷たい石の壁に背をもたれさせながら、右目だけで敵の姿を捉えるが、ぼやけていた。そのまま視界が白転しかけたので、急いで肺から血を絞り出していく。咳を二度。赤黒い血が喉を伝ってヘソまで届く。わたが少し出ているようで、上着の裾から左手の指輪に滴る感触はその前から続いている。2つ目の指輪で2回目に入ることもできるが、やめた。結果は同じだろう。それどころか復元する前に潰される。意味が無い。
右手で額にへばりつく前髪を上げようとして、上手くいかない。親指以外すべて折れて、いくつかは先がどこかに飛んでいた。気付かなかった。左右で損傷が違うのは、途中どこかで無意識にわかっていたのだろう。たぶん二合目のあたりからもう。指輪での底上げが必須だと直観し右に偏重した、その歪さを突かれてやはり負けた。本気を出して初めて負けた。負け。これがか。このままなら、このまま終わる。脱力していく感覚のすべてを迎える。白く、黒く、あ、あ色が戻った。咳を二度。停滞の覆いを流して捨てて、冷ややかな空気が肺に入る。
心臓の再拍動。夜の再彩色。活動を維持する最低限だけが控えめに治癒していた。指輪か。……私が望んだのだろうか。意図はなかった。坊やは猫二匹を抱えて既に去った。勝者に得るものがあってもよいだろう。認める。この敗北は私のものだ。誰にも渡さない。「ぼ、え、あ」咳を二度して、「……もとの姿で戦うのはもうだいぶ前にやめた。あの子がそう命じるときだけ」
口を拭って続ける。「興味があるようだから教えてあげる。足四つで戦うことには先がないのよ。腹は隠せるけれど、頭が前に出る姿勢には、そもそも欠陥がある。弱い部分を前にだす牙での攻撃は、常にリスクを抱えている。そうではない爪は届くところが狭すぎる。敵を殺すパターンが少なく、勝敗は他のごちゃごちゃした何かを足しても、結局身体の大きく強いほうが勝つだけ。つまらない。飽きたわ」前髪が鬱陶しくて、後頭部を壁に押し付けながら喉を反らした。「今日、お前の技を見た。……素敵ね」視界を遮っていた黒線がざらざらと脇に流れていった。それから。左手で顔に血を這わせる。冷め始めたそれを塗りたくる。
「……で? あの子が? 太陽?」にへら。にへら。にへら。「あれはね。ただのつまらない煉獄よ」口の端を歪ませて告げる。
「弱々しい魂の地獄。か細い炎が燻るだけの箱庭。私たちはただそれに炙られ、燃えかすにならないよう耐えるだけ。耐え切れない連中はもう焼け落ちている。あの微温い灯火に。名前なんて知る必要もない。あれに私は何一つ望んでいない。あれが『もう一回』をくれるというから、暇つぶしに遊んでやっているだけ」老婆の顔がまたぼやけてきた。付け焼刃ではここまでか。まあ別にいいが。「今更あれに何の期待もしていないけれど、その清算のときがもしも来たら」にへら。「そのときの私が“どう”であれ、一番にあの坊やを食う。息の根を止めて啜ってあげる。私にしたみたいに」人形の体はそこで死に、光に溶けて消えた。
東棟2F。ルナリアと猫を抱えたまま、とうとう図書館内に踏み込んだとき、ちょうどキィエの主意識が俺の脳に戻った。《おかえり。ありがとう、助かった》《顔の毛はなんで無いの?》は?《え、最初からないけど……無いほうがいいと思うけど……》《役立たず。死ねばいいのに》それきり彼女は一切を閉ざした。えっ、なに?
煉獄、とはうまく言い仰せたものぢゃ あの娘は焼かれ焼かれながら 何かを待っておるのぢゃな さて、あの娘にとっての「何か」とは? 激しい恋慕は破滅へ向かい、深い愛情は生を産む 百有余年を経ようとも、人の心は変らぬものよ ババにもあんな時代があったのぅ まさに "美しき野獣"――― 戦士かくあるべし、ぢゃな老婆は呼吸を整え体力を少し回復させると、すっかり砕けた "嘆きの爪" を先ほどまでキィエがいた石壁に突きたて、武器庫へと駆けて行った。 にしても、あの指環は惜しかったのぅ あのパゥワーが加わればババは無敵なのぢゃが
ふと記憶を辿れば思い出す。ORESに入隊し軍人としてご主人様の元で勤務した日の事を。ある日まーさんと真剣な顔のサージと眺めるような顔のヴォさはお茶を出しても気づかないほどに真剣で。そして更に思い出したのだ。『ハルさん、もし何かあって城を…国を守るのに力がほしいなら…ここに置いておくから。ただしあまり薦めない…本当にどうしても、の時にね…解除の言葉は……』サージの言葉を思い出し、なつかしの軍務室へと急ぐ。どこかでする破壊音に眉を潜めつつ、羊さん柄のパジャマ姿を思い出してちょっとだけなごむ。コレは有事なのか?ただ分かっているのは、破壊が行われていることだけ。
「…は、は、はぁ…つ、ついた、のな…っ!?」軍務室へとつくとそこにはいくつかの血のあと。そして、ハルの気配が一気に毛羽立つ。そこにあったのはサージの手袋。今まで外したことが無い手袋が血まみれになって落ちている。ざわざわと天使の血が湧き上がり、血まみれでも気にせずに拾い上げると抱き締める小さな手袋。白いエプロンにしみが広がるがそのままつかつかとおくへと進む。あのとき教えられた場所…歴代の軍務の肖像の飾られた奥には保管庫。並ぶ軍服をかき分けようとして、ふと自分の格好に気づいた。血濡れのエプロンはボロボロ、スカートも半分こげている。
「…あ…」そこに見つけたのは、保管されていたサージの軍服。ハルが着たら丁度膝下くらいになるだろう。そう思うと辺りを見回してからそれに着替えた。「…んーとー…たしかここにー…うぐぐ…」執務室の奥の隠し部屋の奥。手を伸ばせば取れる場所にその本は保管されている。もうちょい、あ、ああー、とれっ…ええったんすの裏に落ちた百円玉のごとく手を伸ばしては取ろうとした手から逃げていく。何度も何度も手を伸ばし…やっと触れた感触があった。がっちりと掴んで引っ張る。
「…やったのなー!」手にしていたのは何重にも鎖が巻かれた古い魔道書。ハルは躊躇う事無く、主から教わった解除の呪文を口にした。ぶわっというか、ぼわっというか、鎖がはじけて光を放って魔道書が開く。そこに並ぶ文字を見てから頷くとハルは窓辺へと向った。見上げるダイナソア、そして壊れた正門と土煙とどこかで起こる爆音。ヘルハン濃民と大好きな人たちとを守るべく、軍服に身を包んだ姿で羽根を広げて窓から城門へと向って羽ばたいた。その時、見覚えのある黒髪の美女を見つけた気がした。同じく天使であり、懐かしいその姿…北棟目指しているお姿は…「ナノカさまー!!!」
・・・・。ライムはこちらを向いたまま微動だにしていない。効いてないのか、効いたのか、迂闊に近寄ると何があるかわからないだけに確認しようがない。ただ確かなのは動いていないという事。 さて、時間も無いし・・・チラリと後方を振り返り、いつの間にか青く光る義眼で一瞥。 この眼で狙えないものは無い、ということは 見えないものも無いということなんだ。 しかし、その手の冷気はちょっと厄介そうだ。
威嚇で瞬殺光波を撃つ、サージが回避行動を取ったのを確認すると瞬時に『漢獣化』を行い、サージの頭を鷲掴みにする。一閃の抵抗を受けるが全耐性が飛躍的に向上する『漢獣化』には傷一つつけることが出来ず、そのまま地上へ投げ飛ばした。 ゴーワッシャー!!!雄叫びと共にアークダイナソアから飛び降り、空中で元の姿に戻る。義眼MODE:REDリミッター解除ターゲット、王宮ディスパテル全域 最大級にして不可避の光波、さーどうする?
義肢から吸気口のようなものが次々と現れ、大気中の魔力を吸い上げる。 『瞬殺螺旋光h』義眼が激しい光に包まれたその瞬間、鋭い落雷と巨大な火球に包まれた。その向こうに立つ二つの影。 やれやれ、5年前に突然出てったと思ったら相変わらずですねぇ 起こして頂いてすみません、助かりました。 いや、愚弟の始末は兄の務めですから、逆に私が謝るところですよマユキさん。 滅相も無い、お待ちしておりました、セーラー様。
サージに回復を受けたものの昏睡状態にあったマユキに軽い電気ショックを与えて目覚めさせ、目標の行動を先読みしてタイミングを図って最大の弱点である魔法攻撃を最大出力で放っていたのである。 ・・・一撃であっさりか、やっぱ兄さんには勝てなかったか、くそ。一言悪態を付くと、懐から書状を取り出し最後の力を振り絞って投げつけた。 セーラーお帰り、受け取れ。 ヘルガイム最後の仕事、これにて、完・・・了。ドシャ、という音と共に【凍牙】首領は地に崩れ落ちた。
「あそこにも紳士いるー!」触手の先の瞳が下界にいる人物を捕らえる。転瞬、大きな火球が膨らんで散る。一瞬の眩しさがおさまると、光の向こうからインタバルによく似た青い魔族が現れた。「陛下、間に合ったんだ 紳士ーっこのまま北棟王宮 騎士の間へいきましょ これから始まるよ、即位の式典が」青い魔族は書状を持って王宮へ向かう。その人、セーラーが初めてこの地に到着したときと同じ光景が再現されているかのようだ…その姿を認めた多くのひとたちが、徐々に集まってくる。思い思いに歓喜の言葉を口にしながら。誰かそこのスクラップを外務執務室へ運んであげてください…
城門塔にも埋まってるひといるので、誰か気付けの酒を与えてあげてください。たぶんアルコールだけで復活すると思うので…
国民が多く出入りする図書館も、今宵は静かだった。誰もいない。灯りも最低限の夜灯のみ。司書は俺たちの襲撃の前にすでに終業し帰途についていた。資料の盗難散逸への衛たる4名の兵は館の入り口で寝ている。衛兵から拝借した懐中灯を左手に灯した。図書館内は紺と金色を基調としている。異種族に配慮し、館内は全域土足での立ち入りが可能となっている。美しい紺の毛高な絨毯に汚れが見えないのは、シュラク海のネレイドが好む藻の一部に見られる光合成能力を転用した技術による。初期には絨毯を食ったネレイドが腹痛を訴える事例がわずかだがあったそうだ。3度の改良の後、生地に微量の香辛料を混ぜることで現在の仕様となった。
書棚はエントランスから放射状に並び、目的の資料へと素早くアクセスできるようになっている。館の用途は調査・研究を主としており、読み物や児童のコーナーはほぼない。カウンターが入り口左手にあり、右手が簡易の託児コーナーとなっている。「シュアリーさま、どこ行くの?」目的地は、「奥だ。ついてきて」最奥は辞書・事典類の棚となっている。奥の棚は放射状の手前の棚たちに沿うように、緩く湾曲している。棚に鎮座する書の背には、蝋で配架記号が印字されている。奥の棚の前で左折。「……」ルナリアも行き先に気付いたようだ。「そう、古参なら常識として知ってる」
建物は四角。中の棚はそうではない。ズレたスペースには――見えづらい位置のフックを外し、左奥の棚を手前に引く。蝶番が軋んで――階下への非常階段。間抜けでない限り気付くものだ。これは特段に秘匿されているものではない。知っている者とそうでない者との間でテンポアドバンテージを分ける思想だった。非常時のパニック状態を考えると、こちらのほうが有用との考えもある。「降りようか」非常階段は、石材を打ちっぱなしにした質素な作りだった。二人分の足音がしばらく響く。通常の一階半分ほど降りたところで踊り場になる。更に下れば城外へ抜けられる。だが今回用があるのは、「あれ、金庫、だよね」
「でもあるんだけど、そうでもない」「にゃ?」「まあ見てなんせ」中への閉じ込めを防ぐためでもある金庫の裏口前には今、衛兵がいない。“運良く”シフトに穴が開いているのかもしれない。それでも、当然だが金庫への扉は堅い魔術錠に閉ざされている。物理錠に加えて資格者の生体認証を行う最高クラスのものだ。俺は左手に灯火を持ったまま、左手を錠に翳す。「アバーヨ、と」ガチャ。開錠した。
「えっ、なん……!」駆け寄ったルナリアが、俺が右手に提げる焼け焦げた左義腕を見て押し黙る。オーナーの了解があれば所有物の召喚は容易い。「ヴォのエントリーキーがまだ生きているのは折り込み済み」そして脳嘩捉からの物質顕現。物理錠のコピーを差し込み、開かせる。何もかもが詐術。インチキのオンパレードだった。「本当のショーはここから」扉が開く。
「しっかし、城門を抜けるだけでこんなに疲れるなんてーーこれやった人はお仕置きだよね!」などとブツブツ呟きながらやっと門の内側に辿りついた門の脇にあったはずの塔もすっかり崩れ果てている懐かしの風景…なんて感慨は微塵も感じさせないほどにふと、塔の瓦礫を見やると「誰か…埋まってますね…」近づこうとしたその時後ろで懐かしい声に呼ばれた「あ、ハルちゃん。」
「わー、なんかすっごい素敵な軍服着てるけど式典かなんかあるのー?てか、お城とか壊れてるけどどうしちゃったの?」何か言いたげなハルエリエを前に話す隙を与えないかのように一気にまくしたてるように喋る。「とか、まぁ、いろいろ聞きたいんだけどーとりあえずいいところに来ました。」そして、差し出す一本の瓶。「はい、これ。あの、埋まってる人にかけておいてください。」そう言って、渡す。「私、まだ、接見やってきてないからはやく行かないとーなのですよ。それに…ハルちゃんは人を助ける方が似合いますから、ね!」
――ちぃ…っやはり気づかれた。威嚇射撃に反応してしまった。咄嗟の回避行動。危険を察知すれば生き物なら必ず反応するであろう反射的な行動だ。当然そこに隙が出来る、元々翼はあっても空中戦が苦手な自分を呪う。『漢獣化』の異常な速さと力で頭を鷲づかみにされ、尚一層の不利。この状態のヴォルフに魔法剣などほぼ意味がない。ミシミシと頭蓋が悲鳴をあげ、重力以上の力で地面に投げつけられた。その速度に任せたらただじゃあ済まない。景色が何色なのかも判別が付かない、ただただ夜空だけが視界の中心だけを占めている。
一つ目のリミッター解除をしたものの、それを使う場もないとは流石はヴォルフ=ゾルダート。――このまま激突したら………――死ぬか。地面まであと10メートル。左手を胸の前まで振り上げ、近づく地面に向かって一気に投げ出す。目撃した者が居れば…サージの左腕はまるで影のように存在を失くし、それで居て圧倒的な力と赤い赤い獣の爪を備え、通常の倍以上の太さになっている事を知っただろう。その影のような左腕が落下の速度と自身の力を地面に激突させる。耳を壊さんばかりの轟音が辺りを一瞬支配し、地面が激しく陥没した。
どさり、とサージは落ちる。――何とか…なったみたい。彼の左の背から指先までは獣の様相を呈している。元々の黒い翼は更に黒く黒く漆黒であり、左腕と同じように光を全く反射しない程に闇色をしている。何とか上半身を起すと、上空で激しい大気の振動。ヴォルフの『瞬殺螺旋光波』。しかも今までにない程の最大クラス。これは…王城がぶち壊れる…。と、瞬間それが雷鳴と爆音で途切れた。ああ、間に合われた…のか。良かった。そしてサージの数メートル先にその主達現れ、ヴォルフが力なく落下してきた。
最後の力を振り絞ったヴォルフの兄へのプレゼント。この瞬間をどれだけ待ち焦がれたか。蒼い君がヴォルフの投げたそれを受け取るのを認め、ふらふらと進み出る。「陛下。お目覚めは如何ですか…?」血まみれの笑顔だった。それでも心は妙に穏やかで…なんだろう、もう言葉じゃ表せられない。セーラー陛下の前へ膝をつき、初めて仕官し忠誠を誓った時と同じ言葉を紡ぐ。「我はヘルハンプール公国の、セーラー陛下へ永久に忠誠を誓います」その言葉に彼があの時と同じ笑顔を作ってくれた。それだけでもう、命が尽きたとて満足だ。他に何も要らない。
セーラー陛下は書簡に目を通し、決意したように北棟へと向かう。その後姿を見送り…安堵する。ああ、まるで夢みたいだ。彼らが離れた後、ヴォルフを振り返る。意識も途切れ途切れの彼を見やり告げた。「貴方が行かなくてどうするのですか、ヘルガイム」彼の腕を取り起き上がらせた。
「さあ、行きましょう…」肩を貸して数歩…歩む。「す…すいません、私も…無理みたい…です」そう言うとサージはヴォルフを担いだまま倒れ伏した。頭と大腿部からの出血により貧血、それとリミッター解除のリバースのため、ヘルガイムを連れて行くだけの余力が残っていなかった。――格好つけるもんじゃあないですね…恥ずかしい…。意識はそこで途絶えた。妙に満ち足りた気分だった。横でヴォルフのポニーテールがいつもより少しだけ横にズレていたが、今は誰もそれに気づかない。
とかなんとか人助けはハルエリエに任せ、北へ向かう。中庭の泉に辿りついたころ王宮の上空に鋭い落雷と巨大な火球が何かを捉えるのが見えた。(あの雷は…)考えるまでもない一人しかいないもの「ただいま」って言葉を一番、伝えないといけない人だけどでも、今はそれよりもこの言葉ですね。 「おかえりなさい」
「これから始まるよ、即位の式典が」Dollyさんの声が聞こえた。(あ、ほんとに式典だったんだ。ハルちゃんに押し付けてきちゃったけど間に合うかな…(…))とか、考え事をしながら北棟の方へ向かっていると…ボロボロの二人が倒れていた。何をすればこれほどまでになるのか…「し、仕方ないなー私は一応そっち系の魔法使いですし…ただ、レプリカ使うの初めてなんで加減できませんけど、許してね!」そう言って、癒しの杖(レプリカ)を振りかざしその後2つの鈍い音が響いた。
「ナノカさまー!!!」羽根をたたんでふわりと降り立ち、一瞬騒動も忘れて周りをぴょんぴょこ跳ね回る。お城での日々が蘇ると抱きつきたくてたまらない。がば、と両手を広げると一気にナノカさまの質問の嵐っ!「えっと!おりょ?なんですのな?」差し出された一本の瓶をつい受取り目を瞬かせ、いわれた方を見る。「うわ!あれってまさか…!?」瓦礫の中に埋まっている、ちょっと見えるその姿…こっくりとうなづくと微笑んで。「分かりましたのな!ここはハルにお任せのな!」そう言うとナノカさんとは反対の方へと城門塔へとかけて行く。なんで埋まったのかは不明だが…多分あの人。
「…これは豪快に…埋まりましたのなね…」ホウキを握り締めるとその上を一掃き、二掃き。見る見るうちに瓦礫がどけていき、見えて来た姿…「ヤヌスさんっ!しっかりしますのなっ!」掘り出された姿はボロボロで、少し焦りながらも正座するとその膝に頭を乗せる。そして、まずは治癒魔法をかけて行く。少しずつではあるけれど、その姿はやがてかつての姿になる。その唇に瓶の栓を抜いてそっと宛がう。唇が酒で湿るけれど飲み込む気配は無い。「…うー…」しゅぼ、と瓶の中身が魔法で丸い球体になる。気体のようなそれをヤヌスさんの胸の上に当て一気に押し込んだ。
「…どれどれ?…やったのな!」胸に耳を当てると心音がある。目を細めてもう一度呼びかける。「ヤヌスさん、起きてくださいのな!」ぺちぺちと肩を叩いていると気配を感じた。顔を上げて気配を見る。そこには、いつかの見慣れた人影があった。お城で寝ているはずの、その人の。「やあ、ハルさん。おはうございます〜」そんな声すら聞こえてくるようで。ハルはその姿を見て口をあんぐりとあけたまましばし放心した。耳に届いてくる人人の声が現実だといっている。「うわああぁぁぁっ!」ぱああ、と光が広がるように微笑んで立ち上がる。あ、ヤヌスさんが…膝に…
暗い武器庫に並ぶのは棚、棚、棚。三次元の有限空間を最大限に活用するため、細くも強い鉄骨と薄くも剛い鉄板が充分な機械的強度を保ちながら、恐怖と破壊と殺戮をもたらすための道具たちに冷たい寝床を与えている。磨き込まれズラリ並べられた槍の穂先に寿理婆の白髪団子が映り込み、すぐに流れる。槍の列に一本の竹槍が混ざっているが、問題にされない。精緻な装飾が施された通信伝令用魔導器、美術品と見紛う用途不明の新しい器物。それら一切を無視して、老婆は武器庫の奥へ奥へと駆けてゆく。どこから光が入っているのか、室内には仄かな光がある。
進むほどに、保管されている武器の格としたがってそれを扱うべき将の格も上がってゆく。クリムゾン・ディスペアー。ホーリィ・アンゼム。士官以上の者のみが帯びることを許された国定装備。剣、銃、刀、指環、三節棍、十字架、バイオリン。さまざまな形状、様々な色合いの美しい作品群。しかし老婆は、これにも眼をくれない。さらに奥。下級兵士は立ち入ることが許されず、掃除ですら士官以上の階級が必要、という暗黙のルールさえある。特定の呼称はないが、ジュリア.は昔からここを"将星の武器庫" と呼んできた。
公国の英雄たちが個人用の武具を仮置き、もしくは寄贈する場合にはこのエリアが使われる。室内に装飾じみたものは一切なく、これまでの武器事と同じ内装であるにも関わらずそこかしこに安置された名品の数々が荘厳かつ重厚な雰囲気を生み出している。アブソリュート・ヘル。蒼天に歌う乙女。氷雪の刃。秘密兵器セーラー。嫌死の杖。紺地に白抜き。壁にはかつてジュリア.が寄贈した無効盾「ウィンド・ヴェル」がかつてと同じ黄金色の輝きを放っているが、老婆はその盾に映り込むことさえせずに足元をすり抜ける。紺地に白抜きがわずかにはためく。そして、最奥。
黒い山脈。それ自体が一つの機械か魔法装置にも見える、異様な姿。棘があり、目玉があり、角があり、翼さえある。王城ディスパテル東棟武器庫、その最奥にある黒い山脈は、ガラクタの山だった。おそらく、改装の際に一時置きしたものがそのままの状態で今日に至っている、といったところだろう。老婆は、その山脈に向かって立ち止った。「ずいぶんと増えたのぅ」老婆は腕をまくると、その山脈を守護するように鎮座していた古酒「〜花宵〜」の壺をわきに寄せ、発掘作業に取り組み始めた。
ホゥ!!これはパシュミナ殿の魔法師団員時代のコスチュームではないか!ピンクでフリフリ、プリプリでキュアキュア…一時期のセーラー陛下を思い出すのう!いや、陛下はシックなブラックぢゃったか。ちょっと験(ため)してみるかの……なんと! ババのサイズにぴったりぢゃわい!ハート・キャッチ!!鏡、鏡―――あるではないか。む、これは……ヘルハン国営放送盛会名作劇場「つなデレラ」の鏡ぢゃの!永年のあこがれ、RABU&ファンシーな世界へいざっ!…………………………。(ぬぎぬぎ
ふむ、このバケツには見覚えがあるの。コーヒーの匂い、そうぢゃ、ライゼル殿の喫茶ヘルハン名物のバケツコーヒーの器ぢゃの。しかしこれをどかさんと奥が見えぬわい……ふむ! バケツの下から公国軍印の議事録帳が。どれどれ……(パラパラほう、そうぢゃったか!親衛隊に名も無き防衛兵を配備する案はライフィード参謀長殿の発案ぢゃったか!そうぢゃったそうぢゃった。後進のためにも、これはヘルハン歴史編纂局に投げ込んでおかねばの。(ギシャ、ギシャー!)…おぉ、これはこれは、ライゼル殿の『鎖』ではないか。間違えて収納されていたようぢゃの。ちょうどよい、
「ほれ、鎖や。このババのためにこれこれこういう物を探しておくれ」うむ、よい子ぢゃ。それにしてもアレがないのぅ、ないのぅ。アフロ、全身タイツ、赤い服(クリスマス用)、セーラー服(組織「S(セーラー)」ユニフォーム)、む、これは魔剣サーペントブレイクかの?海龍クロスサーペント退治に使われたという名剣、昔セーラー陛下が持ち歩いておられたが、まぁよい(ぽい日に焼け色褪せた木製の椅子。座面の裏に何か書いてあるのぅ。"みんなでつくろう ヘルハンプール!"ホッホゥ!文字に若さがみなぎっておる。これは青空会議室で使っていたものぢゃな。
(ギシャー!)「む……よく見つけてくれたのォ鎖よ。ありがとうのぅ。 おぬしはまったくかわいい鎖ぢゃ。 ババと一緒に来るかの? ともにライゼル殿を探そうぞ」古代遺産兵器"ドライバー・オメガス"。多砲身機関砲、毎秒50発の連射速度を誇る重火器。その破壊力は §親衛隊選抜戦§AbusoluteHell2§ において、現在ではハルベルトチーム儺eamヘルハン凾フ副将として知られる"白銀の騎士"エディーさえも苦しめた。 やっと見つけたわぃ 眼には眼を、ハニワ顔 [∵] これならばヴォ王を撃ち抜くこともできようものぢゃ ヒャヒャヒャヒャ…
老婆が邪悪な想像に心を楽しませたその時、轟音が起こり、武器庫が震えた。老婆が荒らしたガラクタの山は崩壊し最奥の壁際に地下へと続く階段が現れた。*寿理婆・ストーンカ人。タイプ:前衛・速度特化・格闘型特記事項:重火器・暗器、回避、ラデル使い。好戦。嗜虐。隠し:スキル変更自由自在 (殺気/気配消し/カウンター/地形効果/必殺の一撃/…)隠し:対人戦マスター (人型の相手に滅法強い)説明:ジュリア.の曾祖母にして転生前/後の姿。 ユーリの働きかけにより両者は知識や経験を 共有するに至った。性格は異なる。
あそこにも俺?……ああ、確かに青くて角のある人が居るな。セーラー殿……か。即位の式典、なるほ……え……このまま?パジャマで式典に!?いやその前に人前に出られる姿では……色々と。Dolly嬢だけ人だかりから少し離れた所にそっと降ろすと、素早く飛び去った。着替える為に。
さて、そろそろエンディング!「騎士の間」スレを立てましたのでみんなれっつごーぱーりーたーいむ☆しましょう!まだまだ激闘したい皆さまはこのスレで続行OKです!急かすようになっちゃってゴメンネ!でもあと3日だからさ☆
続く雷鳴、爆音。かつて聞いたことのないレベルの音圧が武器庫に眠る鋼鉄の悪魔どもを一斉に一鳴きさせる。この音がひときわ強く響いてきたのは、今しがた発見した階段の先!これまでで最高に邪悪な笑みを浮かべた寿理婆はドライバー・オメガスを担いで階段を走る。くだり、くだり、のぼり、のぼり、のぼる。途中の分岐も迷うことはない。常に、音が―――声が? 行くべき道から聞こえてくる。
地上への出口は押上げ式の隠し扉によって塞がれている。扉に顔面を押し当てるようにしながらゆっくりと持ち上げる。その時、扉の向こうでハルエリエの声がする。 うわああぁぁぁっ!手を伸ばすまでもなく届く距離にハルエリエを視認。どうやら今まさに立ち上ったようだ。そして、ドサリ。眼の前に人の顔が降った。ヤヌスだ!突然のことに凍りつく老婆。しかしヤヌスの顔に生気はない。ハルエリエはただ立っている。ここから顔の表情はうかがえない。 まさか、ハル殿が殺ったのか! あの "神速" のヤヌスを!
激しく動揺する老婆。情報が足りない!遠眼の人影を発見、今度は…ナノカ・コールシード陛下!大小様々の砕けた石材が波打つ中庭を、あしどりかるく、はずむように進んでいく。なんだか楽しそうだ。そして突然スキップを止め、癒しの杖(レプリカ)を天に向かって振りかぶり―――振り降ろした。鈍い音。そして、もう一度。眼を見開き、思考停止に陥る寿理婆。今、あの鈍い音を立てたのは。そして今この瞬間、癒しの杖にだらりとぶら下がっているのはヴォ王の……頭皮( ※ 正確にはかつら)。 ヴォ王も殺られた。 そしてあの頭はおそらくSage殿。
遊びの時間は終わったのだ。二人の清らかな天使たちが王都に舞い降り、争によって秩序を乱す我らは粛清されるのだ。 これが―――終末か。絶望によって集中力を切らせた老婆は足元の階段を一段踏み外し扉を落とした。その音に気付いたハルエリエが地上から通路をのぞき込んだ時、老婆は死に物狂いで逃走を図っていた。しかしあるじに似て賢い鎖は老婆が逃げないよう全身に巻きつきハルエリエの方へと引きずって行った。しばらくの事情説明を受け状況を理解した寿理婆はにっこり笑うと騎士の間へと向かった。(ジュリア.編 fin
『ゴン』「あわわわわわ!ごめんなさいのな!ヤヌスさ…ん?」思わず嬉しくて立ち上がると膝に乗せていたヤヌスさんを地面にっ!その驚きも束の間、何かが遠のく気配がする。ジャラララララ「ヒィイイイイー!」地下道から聞こえる音と声に驚いて中を見ると、そこには鎖にぐるぐる巻きの老婆が…!「どうしましたのな!…じゅ、寿…理婆…さまのな?」なぜか青い顔で鎖に巻かれている寿理婆さまの鎖と誤解を解く。ほっとした顔の寿理婆は微笑んだ。「そうじゃたか、そうじゃったか!そう言うことじゃったか!」微笑む寿理婆にうなづくと地面に転がしたヤヌスさんに気づいて慌てる。
「ハルもすぐに追いかけますのな、だから…」騎士の間へ…これから始まるであろう宴。あの人の下へ…「…だけどこのままにしては行けませんのな」まだ目覚めぬヤヌスさんを担ぐため、ハルはホウキを振り上げた。「ご主人さまー!!!!」ここにきて、ハルを助けてくださいのな。今サージがどうなっているのか、ハルは知らない。けれど、今この声に答えてくれると信じて叫んだ。「たーすーけーてーのーなー!」だぼだぼの軍服の袖をまくった姿で、天高く叫んだ。
鈍い音と頭部への衝撃。ハンパない衝撃だったものの、痛みはそんなにない。とはいえ、痛みに鈍い自分には基準がないので常人にはどれだけの痛みかが分からないのだが。「う…うぐぐ…」呻いて目をこじ開けると妙に軽い。あれ…目が…あれ…?視界には白い服の女性…?――Σは…っ「妃殿下!!!???」振り上げた癒しの杖(レプリカ)の先に銀髪がブラブラしているが、そんなものはもうどうでもいい位の驚愕。まさか、お戻りになっていたなんて…!!
思わず正座。「お帰りなさいませ、ナノカ妃殿下」驚きと笑顔でどことなくぎこちなくなってしまったが、先ほどまで止まりかけていたような鼓動は今では早鐘のよう。セーラー陛下が戻られ、ナノカ様が戻られ…ああ、なんと言う事だろう。こんなに嬉しい事はない。「ただいまなのですよ〜サジさん」そういつもの様にナノカは言うと、「式典に遅刻しちゃうから、そろそろ行きまする。接見も済ませてないのに…」と歩き出す。
「あ、ナノカ様」「はい?」「この子を使って下さいな見た目はコワモテですが、風より速く動けるいい子です」と、右の手袋から使い魔を呼び出す。黒い小山のような金色の耳をした大きな狼。「乗り心地はあまり良いとは言えませんが、ナノカ様が式典に遅れたとあってはセーラー様も寂しいでしょうから。この子なら完璧に安全に運んでくれるはずです」そうしてナノカを黒狼に乗せ、横で意識が戻ってるのか戻ってないのか分からないHAGEと化して呆然としたヴォルフを一緒に跨らせた。膝にDURAを載せて…と。
「ヘルガイムも一緒に連れてってくださいませ。なに、外務室にでも行けば少しは元気になると思いますよ、それに…」「それに?」「この方が居なければ詰まらないでしょう…イロイロとね」そう言って黒狼を北棟へと足早に向かわせた。去り際ナノカが何かを言ったが、サージは聞こえたのか聞こえなかったのか…返事はなかった。
遠くでハルエリエが呼んでいる。私なら何とかしてくれてると信じてる子だ。ふと、左手を見た。魔方陣はそのまま描かれていたが、手のひび割れがなくなっている。――なるほど、癒しの力…か。――元々自分の中の仕掛けは大天使が施したもの。――天使(エンジェル)の力で綻びかけたそれが修繕された…と言った所か。サージの口元から虹色のエノク文字が静かに流れ出る。左手から新しい使い魔が招かれた。
額に銀の逆十字架のついた純白の狼。背には翼。初めて召還したが、何というか…恥ずかしい格好だなと思う。その白狼がチラリと私を見る。『だって白い巨狼に翼だぜ、ちょっと乙女ちっくすぎだろうよ』そう思うと狼はさも『お前が作ったんだろーが』と言う侮蔑の目をした。「さ、ハルさんには貴方がきっと必要ですから、行って上げて下さい。そして、ヨッパのヤヌスさんも一緒に式典に間に合うようにして下さいな」言うが早いか純白の狼は飛びハルエリエの元へ空を駆けていく。
サージはその後姿を見送り、北棟を振り返った。さて。最後はどうしようかな……。彼の向かう先は彼しか知らない。セーラー陛下も、ナノカ妃殿下も、ハルエリエも、誰も知らない。Sargentパートおしまい。長々すいません&ありがとうございました(深礼
「たーすーけーてーのーなー」天高く掲げたホウキを振ると、遠く光り輝く何かが近づいてくる。翼を持ち、額に銀の逆十字架のついた純白の狼。それは主サージの遣わせた白狼だとすぐにわかる。「…来てくれたのなね?ご主人さまは…」美しい羽を静かにたたむと、伏せをして「乗れ」の合図。何とか魔法を使ってその背へとヤヌスさんを乗せる。自分もその背に乗ると彼が落ちないように支え、白狼のふわふわの毛をなでる。「…さ、連れて行ってくださいのな…あの場所へ…ハルは信じていますのな」そういうと、戦いの静まった瓦礫の上へと舞い上がる。
白狼の翼は乗せた者を落とさぬよう静かに羽ばたいた。ヤヌスさんからは萌えるようなお酒の匂い。少しくらくらとしながら眼下を見下ろす。あ、この光景、いつかみた。初めて落城した日のこと。あれからこんなに…こんなに皆でがんばった。嬉しさから、少しだけ涙がこぼれ、そしてゆっくりとあの人の下を目指した…
魔法を使っちゃったあとでふと思い出した。あ、そいえば、ヴォって魔法が………杖の先にはヅラがぷらぷら揺れている。や、やっちまった、かしら…(……)あ、それよりもSargentさんは大丈夫かな?と、過ぎたことは忘れて切り替える私、素敵。覗きこんでみるとちょうど目が覚めたところだった。「妃殿下!!!???」あ、驚いてる驚いてるw「ただいまなのですよ〜サジさん」
そして、式典に遅れるからと黒狼さんに乗せられた私。「サジさんは乗らな…、あ…」言い終わる間もなく黒狼さんは走り出す。一緒に乗せられてるのはヴォ。とりあえずコレを降ろすため黒狼さんは外務室に向かっている。が、二人きりはなんだか、うーん、アレだな。「き、聞こえてるかどうかわからないけどー」やはり微動だにしないがとりあえず言い逃げておこうと思った。「ヴォ、今までいろいろ、ありがとうね。」外務室に到着し、黒狼さんはヴォを部屋に降ろす。意識が戻ってるかどうかわからないその頭に私は、杖にくっついてたヅラをとりあえずかぶせた。
開けたそこは確かに金庫だった。宝物庫と呼ぶにはやや派手さにかけるが、換金の容易な貴金属と宝石類が山と積まれていた。危機の火の粉を潜り、王家と忠臣たちを延命しむるに十分な量ではあった。こんなにも見え方が変わるものかなと、ぼんやりと思った。フロア大の金庫に二人が足を踏み入れたと同時に、雷鳴。永く耳にしていなかったが、わかる。わかった。聞き間違いなどありえない。(間に合ったか、ヴォ……)目的の第一、盟友の大願は成就した。まもなくだ。ついに歴史の彼方から、『我らが夢見たあの園』が。『輝けるヘルハンプール公国』が再びこの地に臨む。であればこそ、急がなければ。
「なんの音?」「いまは先を急ごう。じきにわかる。……あ、奥の時計見える? 何時?」ルナリアが時計の針に気を取られる間に、俺は入り口の扉を引き、閉じる。金庫の口が閉じ、風が止まる。左手の灯火が唯一の明かりとなった。「もう午前2時35分だけど……シュアリーさま?」「おっけおっけ。明かりを付けながら奥に進もう。その間に、そろそろ種明かしをしていこうかな」壁際の灯明に火を分けながら、奥の時計へ向かって二人は歩いてゆく。「俺が調べたかったのは、『誰があの日の俺にヤヌスを追わせたのか』」忘れもしない。「俺たちが逃げ出した日の真実、だ」
6年前のあの日、俺は最高優先度の特務(“準備万全足らしめて取り掛かるべし”)を秘密裏に受けてヤヌス追討へ向かい、結果としてミイラ取りがミイラとなった。……そういう話だと思っていた。「6年前、ヤヌスと共にヘルハンから抜けて、それからしばらくは傭兵稼業や何やらで忙しい日が続いて。過去を振り返るなんてことは、俺たちのどちらもあまりしていなかった。なんだかんだで結構楽しかったんだな。肩書きのないところで気楽にやるのがお互い性に合ってたんだろう。凍牙時代が始まってからのヴォにいくつかヒントが見えてたはずなんだが、馬鹿だったな。
当事者だったから……当事者のつもりでいたから、自分のことしか見えていなかったわけだ。気付いたのは、エジューで革命派の残党狩りを指揮したとき」話しながら、仄暗い石床を確かめるように奥へと進む。「『ヤヌスを狩るのに、なぜ俺一人だったのだろう』、と、ふと思った。秘匿性の高い作戦とはいえ、単騎に任せるなど確実性が低すぎる。まして相手はヤヌス。ありえない。俺なら手練を5人は充てる――“何か理由でもなければ”。当時の国内の状況を思い出して、ちょっと考えてみた。ヤヌスのあの行動があったとき、誰がどう得をし、誰が被害を受けるのか?
当時のヤヌスは公国軍団長であると同時に、公国七大貴族が一、ゾルダート家の嫡子でもあった。それが任務を放棄し脱走となると、当時の国防省にとっても、執政の実権を握っていたいわゆる『上層部』にとっても、そしてもちろんゾルダート家にとっても、看過するなど到底不可能な不祥事だ。発覚した時点で、ヤヌス追討は概ね公国の総意による既定路線だったはず」金庫の中、奥に向かう足取りは少し遅くなる。「問題は、その処理。アクターごとに反応と思惑を推測してみた。
国防省と軍上層部は、もし知れば割れていただろう。ヤヌスは当の軍団長であり、公国軍の大英雄。それ故に一部にとっては目の上の瘤でもあった。その逃亡という前代未聞の事態にどう向き合うべきか。軍法会議での裁きか、それとも、『彼は今こそ英雄として死ぬべきではないのか』?公国上層部にとっては、実は嬉しい誤算だったのではないかと思う。当時の公国軍は国内の主要な名士が参属し、無視できない勢力となっていた。だが世界情勢はPONの覇権が決定的となっていたときで、戦力維持よりも、むしろ軍部のコントロールを失いかけている現状が喫緊の課題だった。直下組織である内務省を軍部に介入させる口実が欲しかったはずだ。
内務省自身としても、ヤヌスの脱走を手引きしている勢力の尻尾を掴んでおきたい。ベストはヤヌスの捕縛だが、最悪死んでもらっても構わない。ゾルダート家にとっては、ヴォルフの政治的生命に関わる問題となりかけていた。もともとは外様から貴族に成り上がった一族が、いまや当主は国家の要たる外務職を我が物とし、陛下と義兄弟の契りすら結んでいる。ほかの六家に、ゾルダート家を貶める動機は十分にあった。ヴォルフにとっても、この一件は手ずからケリをつけるべき事態だったはずだ」灯火が揺れる。
「軍部は、追討者の選定に迫られていた。とにかく脱走されましたでは内務省の介入を招くのが目に見えている。それなりの手練で、この手の任務経験があり、しかも七貴族や政務上層部の息のかかっていない駒が良い」ルナリアの足元で、猫が主の顔を見上げていた。「執政上層部には手駒がない。身内は失うわけにはいかない人材ばかりだ。『……ならば、他所の駒に火を付けてはどうか?』」彼女は何も言わない。「六貴族も同様だ。駒はあれども、不名誉かつ危険極まりない暗殺任務に表立って関与できない。『一族の外に尖兵を探さなければ』」二人の足はもう止まっている。
「もちろんこの3つのアクターの複数に所属している人間もいる。当のヤヌス自体がゾルダート家であり公国軍団長でもあったわけだし。それでも、派閥同士の微妙な思想的綱引きの結果として一定の公約数は算出されることになる。“ヤヌスに傷を負わせうる、かつどの派閥の主要人物でもない、替えの効く一兵卒”。……そうなったら、該当するのは一人くらいしかいないじゃんねー」笑いは自嘲気味になった。「実際にあの後、ヤヌスからも聞いていたんだ。『公国側でいくつか気配を感じてた』そうだ。俺の後詰もいたのかもしれない。万が一俺が勝っていた場合には俺を口封じするためでもあったと思う」
「でも、シュアリーさま、それは……」「うん、確かな証拠はないんだよね。状況証拠から推測してるだけでさ」そして、奥の柱時計まで歩き切り、「だから、確かめに来た。俺の記憶が間違っていなければ、この子がそれを教えてくれる」そっとその美しい木目を撫でた。三度目の『励起』。一夜に三度は確実に暫く後遺症に悩まされるだろう。知るか。最後だ。「いま、何時?」「え? ……2時、35分……………………え」時間が進んでいなかった。
「なんか、へん、これ、時計は――」時計は絶え間なく針を刻んでいた。2時35分44秒から2時35分44秒へ、そして2時35分44秒から次は2時35分44秒へ、2時35分44秒から……「えっ? なにっ、これ、えっ、針は進んでるのになんで、え……」彼女の視線を灯火を掲げて切った。「錯視って知ってるよね。白黒なのに色が間に見えたり、静止画なのに渦が回ってるように見えたり。……この時計はその時間版だと考えると分かりやすい。この時計は、というかこの部屋は“同じ時間を進んでいる”。この金庫が閉じられている間だけね」「なんでそんなものを……」
「製作者は、知人を通じて公国時代の会計資料を調べさせて分かった。建国後のかなり早い時期、後に内務省所管となる、歴史編纂局という泡沫部署が予算要求していたものが特に精査されず通っている。目的は、アーカイブ」『励起』した魔力が柱時計に緩く流れ込んでいく。懐かしいあの頃の風のように。俺は左手に灯火を、脇にヴォルフの義腕を抱えている。「6月に公国に久しぶりに帰ってきていたときに、仕組みをちょっと調べてた。ポイントは扉を閉じた時刻。この柱時計は、この金庫フロアの前後の扉が閉じるたびに、アーカイブの復元ポイントを作っている。最小単位は秒。そしてこれが重要なんだけど――、
この部屋を締め切った状態であれば、この時計の針を弄ることでアーカイブの閲覧ができる。この金庫フロアの、時間そのもののアーカイブを指定して観賞できる」ルナリアは腕を組み、少しだけ悩む顔をして、「つまり……この部屋だけタイムスリップできるってこと?」「ルナちゃ天才。正解。……それを利用して、歴史編纂局は色んな資料をここに入れては出していた。あとで気になった時に覗けるようにと、時間のタグを付けてログにしていたわけだ。もちろん、閲覧は公国の限られた資格者のみが対象だったけど」時計が青く発光しはじめる。
「要件が『公国民』だったのと、歴史編纂局は自分たちで楽しむのに夢中になって、公国の上層部に周知することも怠っていたらしい。特にヘルハンが『公国』でなくなってからは、完全に忘れられていた状態だった」だが。「喜ばしいことに、さっき扉を閉める前、久方ぶりにこの地は『ヘルハンプール公国』になった。そしていま『“ヴォルフ外務”と”シュアリー公国軍師団長”が特命を負ってやってきた』。久しぶりに自分のことを呼ばれたこの子がそう勘違いして、驚きつつも歓び勇んで任務を果たしたとしても、――不思議じゃない」そして。柱時計に仕組まれた集積魔術回廊が輝きながら展開した。
無限に近い膨大な歴史の、無為とも言える蓄積のタグだけで視界の全てが覆われていく。最新作成のタグは2時35分44秒。最古は……探しきれない。閲覧記録も同時に見ることが出来た。最新は、2時33分2秒に閲覧された、2005年3月4日……の記録。これは、「さっきの婆だな。風読みで位置は追っていた。彼女の意志に呼応して、正面側から入った際に自動的に飛ばしたんだろう。そのころ、まだここは武器庫だったはずだ」そして俺の求めるものもその時代にある。ここが武器庫だった時代にある。「じゃあさっさと行って、さっさと終わろう。もたもたしてると大事なものを見逃しちまう」「シュアリーさまの、望む日は?」
口の端を吊り上げながら、タグを選んだ。視界が飛び――そして降りて。ここは。「2006年5月23日。ペテンの仕組まれた日。使い潰すのにちょうどいい駒の、最初で最後の大舞台となるはずだった『あの日』だ」運良く、その日のタグは一つしか無かった。
覚えている。ああ覚えている。あの日のことはこんなものよりも誰よりも俺が覚えている。俺への指令は、軍服に挟まれていた。“国定装備の一つ”である軍服。俺はあれが俺のものだと思っていた。なぜいつもと違う場所なのかと訝しみもしなかった。だがわかる。今ならわかる。何故なら――。
そして、一部始終が流れて、扉が閉じた。
「用は済んだな」もたれかかっていた柱時計から身を離し、魔力の流入を止める。三度目にも関わらず『励起』した身体の調子はすこぶる良い。シュラク海に飛び込んで一晩中はしゃいでもお釣りが来そうだった。身を翻す。金庫の裏口へ。「……」ルナリアは、立ち尽くして何も言わない。見覚えのある顔だったのかもしれない。「ヴォルフのおかげで再びこの国は公国になった。そろそろ戴冠式がはじまっているかもしれないし、早く戻ったほうがいいと思う。俺は」あともう一仕事。たぶん、パレードが行ってしまう前には帰ってこれるだろう。
「じゃあ、そういうことで。女の子を遅くまで付き合わせて悪かったね」「なんで見せたの」彼女の視線が、「なんでルナに見せたの。……一人で来れば、誰にも知られずに……あなたしか知らずに」射抜くように見ていた。俺は、彼女に向き直らないまま、「俺は、俺のいまの意思も、そしてこれから冒すすべても、正しいと思ってる。認められていいはずだって。……それは何か、間違ってる気がする」「それを、ルナに見てろっていうの?」「君しかいない」彼女に振り向く。「公国の闇を背負うのは君たちの宿業だろう、レオプール伯爵令嬢」
「兄君がしたように、君も貴族たる者の責務を果たすが良い。……今夜、君だけが中立だった。資格はそれで十分だ。今からの俺をどうするかも、君が自分で決めればいい」「……」彼女が俯いて、視線が切れた。まぁ、今すぐどうこうというのは、無理だろう。今日この日の、そして過去に起こったことの意味を彼女が考えてくれればそれでいい。“誰かがなすべきことをなす誰か”、その候補が今日生まれたのだ。俺は、それだけでいい。それじゃ、行くか。金庫の扉に手をかけて、押しひら――――「待ちなさい」…………。…………。…………。……………………なん、だ?
呼び声に振り向く――と、見覚えのない少女がいた。姿かたちはルナリアにそっくりだった。さっき話していたそのままの姿だ。可愛らしい愛玩動物のような存在、会議室のマスコット、愛すべき国民の妹……だったはずだ。今ここにいた少女は。だがいま、ここにいるのは、「ヘルハンプール公国旧公国軍師団長、ならびに旧内務省特務隊所属シュアリー。わたしの目を見なさい。わたしの声を聴きなさい」……誰、だ?
「話はわかりました」今宵、どれだけの血が流れただろうか。「あなたは、わたしの兄の部下だったのですね」公国最強と謳われた者たちが武芸を尽くし、魔導を極め、戦道の限りを求めたこの夜になお生き残った俺が、「自らの利得のために、この公国で斯様な悪徳を晒した者たちが」この“ドレッドノート”が、「この国の新しき夜明けにまだ居座るつもりであるならば」なぜ、「――兄の留守は、わたしが埋め合わせます」なぜこんな少女に、膝をついて頭を垂れるのか。俺自身にすらわからなかった。セーラー王にすらここまでの畏敬を感じたことはない。俺は国を捨てた根無し草だ。だったはずだ。だが――
彼女は身一つ揺るがせず、ただ蕾のような唇で、いかずちのように告げる。「レオプール伯爵家、ルナリアが命じます」その潮のような力に呑まれて、俺は身じろぎすら出来ず、ただ彼女の月の眼だけを、魅入られるように見つめ続けて、「……獅子身中の虫を排除しなさい、シュアリー」「――主よ、御意のままに」それが、俺たちの影の戴冠式となった。
――建国王セーラーの復帰と、公国の復活。その戴冠パレードの興奮も冷めやらぬ、9月初旬の朝。シュラク海に3つの死体が浮かんだ。解剖の結果、死因は溺死だった。三者ともが旧公国時代を表裏から支えた、その筋に知られる実力者であったが、戴冠の熱狂に圧され、その事実が衆目を留めることはついになく、世紀に一度の祭りに少々浮かれ過ぎてしまった、ありがちな事故の犠牲者として、彼らの死はやがて、忘れられていった。 終
ひび割れて乾いた唇に、度数の高い酒はちょいと染みる。知らないシーツの色、知らない室内の装飾。だが慣れた寝心地。自分が置かれている場所を理解するのにさしたる時間は掛からなかった。「お目覚めですか?」柔和な笑顔の使用人に話しかけられる。「ああ、久々に気持ちいい寝起きだよ」服に着いた残り香と、使用人の話で手当をしてくれた人は分かった。脳裏に浮かぶあの子は今頃、目をくりくりさせながら騎士の間ではしゃいでいる事だろう。
「悪い、折角の戴冠式だ。正装で出たい。用意はあるかい?」「お召し替えでしたらこちらに。 ヴォルフ様よりご指示がありましたので」流石の親父、こういうことに関しては仕事が速い。着替え終わって一息。いくら俺でも推参する時位は素面で行くか。水を・・・・コン・コン「お召し替えは済みましたでしょうか?」先ほどの使用人とは違う声。だが見事なタイミング、王宮付きの使用人だけはある。「あぁ、済んだよ、ありがとう。ついでで申し訳ないが、冷たい水を一杯くれないか?」「かしこまりました」ややあって、水を持った使用人が部屋に入ってくる。
「シュアリー様よりご伝言をお預かりしております。」一気に水を飲み干して、聞く。「伝言?」「はい。」『ちょっと先に2杯飲んだ。ウォッカのトマトジュース割りと、xyzを』「との事です。」その使用人の目を見て、考えた。首元を見た。理解した。「悪いが、返戻を頼む。『ありがとう』とだけ伝えてくれ。」「かしこまりました、それではこの後の予定がありますのでこれで失礼します。」踵を返し、乱れぬ歩きで去っていく使用人。成程、王宮付きでなくともレベルは高いわけだ。あの偏屈なレオプール伯爵に仕えていたならばな。
「公国の闇を背負うのは君たちの宿業だろう、レオプール伯爵令嬢」 闇?「兄君がしたように、君も貴族たる者の責務を果たすが良い」レオプール伯爵家の、責務……。noblesse oblige。ゼフィ兄様の言葉が甦る。国政で忙しい両親に代わって、弟妹の教育は長兄の役目だった。幼いころから施された無私の教育。「今からの俺をどうするかも、君が自分で決めればいい」ルナの中で何かが頭をもたげた。いつの間にか俯いていた顔を上げる。いつもとは違う、朱金に輝く瞳が、扉に手をかけるシュアリー様を捉えた。(このまま行かせては駄目)「待ちなさい」心の声に呼応するように、口が動いた
王族が太陽なら貴族は照り返す月。闇を照らす月影。この『ルナ』は月の女王。レオプール伯爵家の意思そのもの。すり替えられた、指令。すり替えられた本人がいないなら、妹が代わりを担わなければならない。代わって、シュアリー様の足元に光を。誇りを。「……獅子身中の虫を排除しなさい、シュアリー」ひとりで闇は背負わせない。それがレオプール伯爵家の矜持だから。太陽が輝きを取り戻したのなら。濃くなる闇に負けない明かりが再び必要になる。そっと目を伏せる。久しぶりの光を浴びてこよう、そう思ったところで意識が途絶えた。